Y建築会社:外壁防耐火構造等の違反建築が新たに発覚
今般、Y建築会社が建築した建物では前回迄の小屋組、省令準耐火構造、断熱構造、防火構造、床組構造等における施工不備(KJSレポート73-1・2・3・4・5)に続き、さらに外壁防耐火構造等(外壁部材の手抜き工事)に関する瑕疵・欠陥が新たに発覚している。
≪外壁構造(瑕疵欠陥)に関する建物等の条件≫
- ●木造軸組工法の戸建住宅
- ●外張断熱工法
- ●アキレス社の断熱材キューワンボードを外壁に設置
- ●外装材はサイディング張り、またはラスモルタル塗り仕上げ
- ●外壁通気工法
- ●市街化区域内のいわゆる法22条地域以上の地域内(防火地域、準防火地域外であっても特定行政庁が外壁や屋根の防火性能について指定している地域に建つ建物。又は、省令準耐火構造として建築された建築物。)
≪調査の結果≫
Y社建物の下地胴縁材(通気胴縁)の断面の厚みは21mmである。ところが幅については45mm以上が必要なところ36mm(所要寸法の8割)の通気胴縁しか設置されておらず、下地胴縁材(通気胴縁)の断面寸法不足が認められている。これらは、「住宅瑕疵担保責任保険 設計施工基準」と「外壁の防火構造」に違反している。
また、開口部周囲(サッシ回り)の目地部等については90mm幅の下地胴縁が必要であるが、本件建物の開口部周囲では36mm幅の下地胴縁材(所要寸法の4割)しか設置されておらず、さらに開口部の4面に設置すべき通気胴縁についても鉛直部の2面のみにしか設置していない。
〔上段写真〕赤枠の写真は外壁の防耐火規定違反(手抜き工事)の下地通気胴縁を示す。(Y社) |
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〔下段写真〕青枠の写真は外壁の防火規定認定に適合している下地通気胴縁を示す。(他社) |
※写真中のスケール部分の寸法を概ね合わせているので大きさを比較してみて下さい。 |
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↑ 建物の出隅、入隅以外の窓周囲を含む全般に設置されているY社の外装下地通気胴縁(↑写真は外壁軒天部) |
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↑ 全般用外装下地通気胴縁(他社) |
↑ 窓周囲、出隅、入隅用外装下地通気胴縁(他社) |
≪コメント-1 (欠陥住宅被害者の立場でコメント)≫
上段写真のように小さな通気胴縁を設置したとしても、幾らも儲かるものではない。小さな通気胴縁を使用すれば、外装材の荷重に対する保持力が著しく低下することによって、外装材等に不具合を生じさせるうえ、耐久性は確保できない。さらに、防耐火構造上の性能が確保されない等何一つ良いことはない。それにも拘わらず、Y社はこのようなお粗末な手抜き工事をして、素人の建築主に防耐火構造規定違反の建物(欠陥住宅)を引き渡していた。そもそも、この程度の(防火規定の)施工基準すら知らない建築会社が、さもプロであるかのような看板を掲げて建築(商売)をしてきたのだから、素人集団或いはプロモドキ集団(一級建築士を含む)と言われても仕方がないだろう。
■.本件についての説明
本件建物は、省令準耐火構造として請負契約が交わされ、各設計図書(設計概要書・矩計図・立面図・基礎伏図・仕上げ表等)及び確認申請時の設計検査申請書類にも省令準耐火構造として確認申請がなされている。したがって、本件建物の外壁の防火構造等は「建築基準法第2条8号に規定する防火構造」、または「同法の規定に基づき国土交通大臣が認めるもの」とする必要がある。
建物の外壁で、モルタル塗り部分については、キューワンボード断熱材の設置につきアキレス社が防火構造方法に関する大臣認定を取得した番号(PC030BE-0146)で設計されている。また、サイディング板張り部分についても、同断熱材を外張断熱工法として設置する場合、同じくアキレス社が防火構造方法に関する大臣認定を取得している防火構造方法(認定番号:PC030BE-0237)となる。
防耐火構造に関する大臣認定の仕様とは、『その認定仕様どおりに一番不利な試験体を実際に作成し、性能評価機関で実際に燃焼試験をしたうえで所定の防火性が有るか否かの検証をしている。したがって、事細かな材種や寸法等を含めての検証結果によるものである。(国土交通省)』したがって、法的に要求された部材の省略あるいは、法的に要求されている部材の寸法を小さくすることはできない。
アキレス社(断熱材メーカー)が取得している大臣認定の防火構造方法に関しては、防火構造上、外壁下地胴縁材の設置方法・材種・断面寸法等が定められており、言うまでもなくその構造方法を厳守してこそ、期待される防耐火性能が充たされるものである。換言すれば、その規定が遵守されていなければ、期待される防耐火性能を充たさない。
住宅瑕疵担保責任保険「設計施工基準」等の施工基準・施工規定では、外装サイディング板張りの場合、通気胴縁に対しサイディングの留め付けに必要な保持力の確保を求めたうえで胴縁の幅を45mm以上と明確に規定している。すなわち、外装材の留め付けや防火性能等につき、その性能を確保するための規定であることにほかならない。
外壁下地胴縁材は重量のある外装材を長期的に保持しなければならない。したがって、下地胴縁の寸法形状(材質等を含む)については、胴縁材の割れや変形によるそり等の回避、ビスや釘打ちをした場合の保持力確保のための縁空きの確保、さらに材質(品質)のばらつきによる保持力低下の回避(信頼性を確保)等をするために検証のうえ、外装材メーカー各社が規定している断面寸法である。よって、外装材メーカーとしては『設計施工資料集に反した施工(36mm幅の下地胴縁を設置している場合)に起因する不具合については一切保証の対象外』としている。
そもそも45mm未満(一般部)の下地胴縁でも良いとする施工基準・施工規定はどこにも存在しないし、日本住宅保証検査機構(JIO)及び、その他の住宅瑕疵担保責任保険法人においても36mm幅の下地胴縁(通気胴縁)については一切許容していない。これは上記のような目的が達成され難い、或いは達成されないからである。したがって、同社の建物(本件建物)は外壁の防耐火構造に関する重大な瑕疵(欠陥)が存在するものと断定する。
≪追記≫
尚、同社の建物(本件建物)については、屋内側の内装プラスターボードの留め付けについての施工不備も認められている。外壁の防火構造は屋内外部一体で認定がなされていることから、これも、併せて防耐火構造に関する大臣認定の仕様に違反している。よって、同社の建物では建物外周の屋内外部共に防耐火構造方法の規定に適合していない。
≪コメント2 (欠陥住宅被害者の立場でコメント)≫
Y建築会社は長年にわたり外張り断熱工法を売りにして建築業を営んできたにも拘わらず、外張断熱工法の防火構造方法に関する認定の基準や規定を遵守していない。同じ設計者、同じ工事監理者、同仕様で同社職人等が施工しているからには、恐らく外壁の防耐火構造に関する欠陥は一部の建物だけにとどまらず、その他にも過去相当数の建物に及んでいる可能性がある。どれだけの旧客に不安と実害を与えることか、その思慮の無さにはただ呆れるばかりである。
一連の瑕疵欠陥(手抜き工事)等については、その棟数の多さから社会性があると判断されること、及び裁判の進行上にも悪質な対応が未だに繰り返されるなど、同社の対応は極めて醜悪さが際立っている。消費者を欺き続けるY建築会社は消費者の害毒といっても過言ではないだろう。
※掲載内容についてのお問い合わせについては、一切応じることは出来ません。但し、本件に関し利害関係のあると思われる方からの問い合わせについては、一定範囲の情報を提供します。
以上
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