品確法にいう住宅性能保証、いわゆる設計評価や建設評価を受けている建物だからといって、瑕疵が無いことを保証するものではありません。また、住宅瑕疵担保責任保険に加入しているから安心であるとは限りません。
建築会社は以前は何か問題があった場合など「中間検査や完了検査を受けているから問題はない」などといっていましたが、近年では「住宅性能保証、いわゆる設計評価や建設評価を受けている建物だから問題ない」或いは「瑕疵担保保険に加入しているから問題ない」とまでいう建築業者がいます。ここで皆さんに理解して頂きたいのは、上記の何れの制度や保険等を利用した建物だからといって決して建築された建物や建築される建物に瑕疵が無いことを保証する制度(性格)のものではないということです。
その証拠に住宅性能保証は一定の性能を確保した住宅を建築する或いは引き渡すことを定めているだけであり、建物に瑕疵が無いことを保証する文言はどこにもありません。そして、瑕疵担保責任保険は一言でいえば実際に瑕疵があった場合に建築会社の保証能力を確保し建築主等を保護するためのものです。そもそも、住宅性能保証自体が瑕疵の無いことを保証するものであるならば住宅瑕疵担保責任保険の制度は必要がないはずです。従って、それぞれ制度の趣旨(本来の目的)が違うのです。ちなみに、実例としてここ1年半のうちにKJSで調査を行った建物で新築後半年から3年の建物(注文建築)で既に建て替えを行った建物が1棟、或いは建て替えを建築会社側が希望しているなど瑕疵の程度が激しい事案が2棟、その他にも重大な構造上の瑕疵の存在する建物が数棟ありました。無論、これらの建物はいずれも、住宅性能保証にいう中間検査や完了検査を受けた建物でしたし、更に住宅瑕疵担保責任保険(強制)にも加入している建物でした。
ところで、先般、福岡市近郊の建売分譲住宅購入予定の方からの依頼で完成新築建物の調査を行いました。当該建物は瑕疵保険加入、設計・建設評価を受けた建物です。しかし、以下のような問題点がありました。
床張り合板(ネダノン)の施工において、釘頭径が小さいうえ釘頭のめり込み深さが許容される範囲を全般に超えているなど床剛性が確保されていない可能性がありました。これはN釘又はCN釘以外の異種の釘が使用されている可能性があり「詳細を確認する必要がある」と判断をしました。
更に、畳下においては著しいカビやキワダレ(シミ)が認められました。構造用床合板の含水率は通常12%程度ですが、そのカビやキワダレの部分及び釘周囲等の15箇所を計測した結果、何れも18%~32%であり、その内12箇所が20%を超えていました。通常では有り得ない数値ですし、これでは著しいカビやキワダレ等が発生していても不思議ではありません。雨天時の養生不足によるものなのか、漏水等によるものなのかは詳細調査をしないと分かりません。いずれにしても床合板の十分な乾燥やカビの除去等が必要でしょう。
購入者の方が売買契約にあたりその旨(上記の2点)を建築会社Aへ確認してくれるよう申し入れをしたのですが、その結果、建築会社Aの回答は『そこまで言う客とは契約をいなくて良い。建設評価を受けている建物だから修繕も改善もするつもりはないし、その必要はない。』といった趣旨の回答があり、契約の予定は当日に流れてしまいました。
ここで建築会社Aの思惑がいろいろと見えてきます。
① |
あくまでも設計・建設評価を受けている建物だから問題がないものと見做して他の客に販売してしまう。 |
② |
今回の指摘や確認の要望を受け入れた場合、同分譲地内のその他の建物に対する不具合をも認めざるを得なくなる可能性があるためその影響(風評被害)等を回避するために、本件建物に関してのみ改善をして他の客に販売してしまう。つまり、他の建物については知らぬふりをして販売してしまおうとの思惑が疑われます。 |
いずれにしても、この建築会社Aは今回指摘を受けて不具合がある可能性を既に認識しているのですから、このことを購入者に告知しないで販売した場合は宅建業法に抵触する可能性も否定できません。無論、全てを確認又は改善したうえで販売するのであれば何ら問題ありませんが、では何故今回購入を決意していた客に対し『建設評価を受けている建物だから修繕も改善もするつもりはないし、その必要はない。』などと筋違いのことを言う必要があるのか。以下の写真に示すようなことは建設評価の項目にはないことくらい建築会社なら当然に知っているはずですが、それを知らぬふりしてカビが生えている部分等には畳を被せて隠し何もしらない素人の客に販売してしまうのか。
(左)畳下の構造用床合板に発生している
カビやシミ等の状態 |
(中)床合板の含水率が28% |
(右)釘頭のめり込み深さが7.51mm |
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ともかく、これらの件について契約時に確認や改善等を要望するような客とは売買契約をしなくてもよいという建築会社Aの姿勢は建築会社としてはどうなのでしょうか。
福岡市近郊で分譲建売住宅の販売をしているケースで、この建築会社(株式会社A)の建売分譲住宅である場合は相当の見極めが必要です。尚、これらの建物は不動産業者が仲介や販売代理等を行っているケースもあるようです。
以上 |