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KJSレポート

 


 
『発信』それでよいのかY建築会社と県建築士会
No.70 - 2012/8/3

住宅の瑕疵(欠陥)の問題に関し建物調査を行うことになり、建築主はY建築会社と協議のうえ、第三者性を確保することを特に重視しKJSに調査を依頼することにしました。しかし、後日、Y建築会社は公平性を図るためとして○○県建築士会(以下、建築士会と表示する)へ建物調査を依頼することを建築主に伝えてきました。今回は、その際の問題点、更に、その後のY建築会社(Y建築士事務所)と建築士会の不誠実な対応等について問題提起をします。

レポート70イメージ1

≪上記の略図(経緯)の説明≫

  1. ①.②..Y建築会社は、H弁護士を介して建築士会会員であるN建築士に建物調査を依頼しました。
  2. ③.④.N建築士は建築士会の役員であるT役員に相談し、T役員は建築士会からの派遣という形で、自分自身(T役員=T建築士)とN建築士(本人)の2名を派遣しました。
  3. ⑤.建築士会側は、建築士会の派遣承認書を建築主に渡し、公正な立場で建物調査を行う旨を伝え、調査が終われば建築主にも調査報告書を渡すこと(Y建築会社から調査費用を貰うので、Y建築会社に2部を渡すので、そのうちの1部をY建築会社をとおして渡すとの説明)」を約束し、建築主の承諾を受けたうえで本件建物の調査を行った。また、建築士会の両者は、建築主がほかに(KJSに)建物調査を依頼していることを調査の当日に建築主から聴いたうえで調査を行った。
  4. その後、当事務所で調査を行った結果を、建築主と同席のうえでY社に説明を行った。その際、2週間ほど前に行われていた建築士会の建物調査の結果と、その報告書の提出時期についてY建築会社に尋ねると、Y社いわく、「建築士会より沢山の指摘項目を記載した書面が提出されており、その改善策等を記載したものを建築士会に対して提出するよう求められているので遅れている」との説明がなされた。また、当KJSで説明をした調査内容と重複している事柄(指摘項目)があるのかを尋ねると、1項目(左官工事の施工不良)だけが重複しているとの回答であった。
  5. ところが、それから1ヶ月以上経っても建築士会及びY建築会社のいずれからも報告書が建築主に提出されません。従って、建築士会、及び、そのN建築士に事の次第を電話で尋ねたところ、驚くべき事実が語られた。
(イ) KJSの建物調査の結果では大変厳しいことを言われていると、Y建築会社が言っていた。
(ロ) 沢山の指摘項目を記載した書面をY建築会社に確かに提出しているが、書面を提出しているからといって、建築士会としての署名も何もしていないし、正式なものは出していない。
(ハ) 調査の依頼者はあくまでもY建築会社であることから、建築主へ報告書の提出はしないことにした。
(ニ) あおり止め金物の未設置や、外装材設置の為のスターター金物の設置不備などについて、改善策を出すように求めている。
(ホ) 当建築士会は近く公益法人化へ移行の予定があり、公平な立場を維持したい、或いは関わりを避けたいといった趣旨のこと。
(へ) Y建築会社から、調査の報酬は当然貰っている。
  以上のようなことが述べられました。

≪上記の(イ)~(ヘ)に対するコメント≫

(イ) 「大変厳しいことを言われる」との表現は、KJSが指摘をした内容が度を超えているかのようにも聞こえますが、実際は指摘事項が著しく多いうえ、瑕疵の程度や手抜き工事の内容がそれ程酷いという意味です。
(ロ)(ハ) Y建築会社によれば、「報告書を建築主に提出しないことについては、建築士会のN建築士が山﨑氏より電話があった際に山﨑氏に伝えた」としている。しかし、建築士会は、本件建物の調査の関わり方について事前に建築主と電話で話をしており、既にトラブルになっていることは承知のうえで “調査報告書は提出します”と約束をしたうえで建物を(家の中を)調査したのです。その約束を破るのであれば、その旨を直接建築主に伝えて釈明なり謝罪をすべきでしょう。公正さを欠いた結果は、下段(二)のような隠蔽に繋がるのです。
(ニ) 上記の4.の後段に記述のとおり、Y建築会社は皆の前で「重複している指摘事項は左官工事に関する1項目だけだ」と説明していたが、建築主に対し嘘をいい、その他の重複した指摘事項を隠蔽していたことがはっきりとしました。
(ホ) 「Y社には正式なものではない書面を渡しているが、建築士会としてはトラブルになるのは困るので建築主側に報告書は渡さないことにした」という、後出しの無責任な言い分が果たして公正な立場といえるのでしょうか。建築士会として社会貢献等を目的とし、公益法人に移行するのであれば(公益法人化したのであれば)、一般消費者(建築主)を無視せず、名実ともに公益法人として信頼に足りる建築士会であってほしいものです。
(へ) Y建築会社も、建物調査費用を支払った事を否定してはいません。ちなみに、建築士会としての業務内容について事務局(複数の女性職員)に確認をしたところ、「建物調査に関する派遣業務は行っていない」との回答でした。無論、建築士事務所協会に属する建築士会であっても建築士事務所としての登録をしていなければ、報酬を得て建築士法に関する建物調査等の業務を行うことはできません。

N建築士本人から述べられたように、報酬の授受があったことは確かなのでしょうが、但し、建築士会としての報酬は一切受け取らず、建築士会から派遣され、調査を行った者として、役員であるT建築士と会員であるN建築士が個人的に報酬を受領したのであれば、問題ないことになるのでしょうか。

先般、Y建築会社は瑕疵の程度を踏まえたうえで建て替えをする旨の提案をしていました。また、当KJSで行った調査結果だけでも、40~50項目近い瑕疵や施工不備等を指摘しており、建築会社が自ら建て替えの提案をせざるを得なかったのかも知れません。
建築士会が行った建物調査の結果がどのようなものか全容は分かりません。しかし、Y建築会社と建築士会のN建築士によれば、KJSの調査結果と重複していないとする不具合が、その他にも沢山あることになります。従って、建築士会が行った建物調査の結果をY建築会社と建築士会がともに隠ペイしたままで、今後の建て替えや瑕疵修補等に関し、建築主が同じ建築会社や同建築士等を信頼することができるのでしょうか。また、改善工事や建て替え等を容易に容認することができるのでしょうか。皆さんは、どのように思いますか。

そもそも、建築会社が自ら建て替えを提案しなければならないほどの瑕疵とは、一体どのような重大な(膨大な)瑕疵があるというのでしょう。今回のレポートでは具体的な記載を控えますが、ただし、本件の経緯については、

防耐火構造等に関する瑕疵の程度が全般に著しいこと。
同社の建物は、建築基準法等に関する瑕疵のある建物が相当数に及ぶ可能性が高く、社会性があると思われること。
設計不備や工事監理ミスが明らかであるにも係らず、当該建築士(Y一級建築士)は1年近く経っても建築主に一切の謝罪をしないこと。(関連;KJSレポート68-1)また、Y建築会社は「指摘事項について特段に反論はしない」としながらも、瑕疵を瑕疵として認めようとしないなど、建築会社の姑息な姿勢に、現状では事態の改善に期待が持てないこと。
フラット35Sの設計検査を受け、更に適合証明証が発行されているにも係らず、建て替えを検討しなければならないほどの瑕疵が存在すること。そもそも、適合証明証はY建築士の虚偽の申請によって発行されたものであるにも係わらず、Y建築会社は本件建物の施工不備による瑕疵や欠陥部の存在は、行政等((財)○○○建築住宅センター)の検査のあり方に問題があるかの如き主張の書面を建築主側に提出し、一部に責任転嫁をしていること。
一生の買い物である新築に際し、建築会社や建築士から夢を砕かれた建築主(被害者)の心痛が著しいこと。
建築士会の対応にも公正な対応が期待できず、信頼を裏切られた建築主の憤り。
新築建物でありながら、不動産としての経済的交換価値が著しく低減してしまったこと。

などが挙げられ、これらのことを鑑みれば、今後、本件に関する公な情報の提供も必要な場合があるのではないでしょうか。これとは別に、当KJSとしては、消費者(建築主)の利益の保護の観点から、利害関係のあると思われる方からの問い合わせがあれば、本件に関する一定範囲の情報の提供をする予定です。

ちなみに、Y建築会社(Yホーム・Y建築士事務所)に対しては、工事監理報告書の未提出など建築士法上にも問題があったため、行政等より立ち入り(査察)が行われたとの情報が伝わっているようですが、事実か否かは不明です。

以上

≪本件に関連するコメント≫

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」及び、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(H.19)」は何のために、誰の為にあるのでしょうか。本来は、実際に瑕疵のある住宅が建築され引き渡されてしまった場合に、瑕疵担保責任保険の加入等によって、建築会社等の資力(瑕疵修補能力)を担保し、新築住宅の購入者や建築主の利益を保護するために立法化(制定)されたものです。

しかし、実際にトラブルになった場合に、資力のある建築会社ほど瑕疵担保責任保険を利用しないのが実態です。つまり、建築会社としては、上記①及び②に記述しているような事での風評被害を第一に回避したいのです。これまでも同じような瑕疵のある建物を建築してきている可能性が高いことを鑑みれば、集団訴訟にでもなったら大変です。保身のためには瑕疵を瑕疵として絶対に認めようとはしません。

また、指定住宅紛争処理機関による斡旋・調停や仲裁の制度があるものの、それでも調整がつかなければ、つまり、建築会社が瑕疵を瑕疵と認めなければ裁判にならざるを得ないのです。

更に、瑕疵担保責任保険法人に問い合わせるとよく分かることですが、建築会社とトラブルになった際に、建築会社と瑕疵担保責任保険法人との保険契約内容等を被害者である建築主が尋ねると、「建築会社の承諾がなければ情報の開示はできません」と断られてしまいます。これでは誰のための、何のための瑕疵保険なのか分かりません。

これらの事(建築会社が保身のために瑕疵を瑕疵として認めないこと)を鑑みれば、建築主側は一定のリスクを覚悟してあくまでも司法の場で争うのか、或いは、妥協するのかを選択せざるを得ないことになります。これが現実です。

「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」に定める瑕疵担保責任保険の制度は、無論、必要であるからこそ制度化されたものであり、その保険制度自体を否定するものではありません。しかし、その利用に関する実情は本来の目的に沿い難く、建築主にとっては大変困難なハードルが待ち構えていることを、このKJSレポートをご覧いただいた皆さんに是非理解して頂きたいと思います。

ちなみに、一般の人では裁判という中長期戦は大変なことです。決してお薦めするものではありません。しかしながら、上記の①~⑦等に記述しているような特段の事情や人道的に許されざる行為等があれば、止むを得ないケースもあるのではないでしょうか。

KJS

 
『発信』建設評価を逆手にとる建売分譲業者A
No.69 - 2012/4/12

品確法にいう住宅性能保証、いわゆる設計評価や建設評価を受けている建物だからといって、瑕疵が無いことを保証するものではありません。また、住宅瑕疵担保責任保険に加入しているから安心であるとは限りません。

建築会社は以前は何か問題があった場合など「中間検査や完了検査を受けているから問題はない」などといっていましたが、近年では「住宅性能保証、いわゆる設計評価や建設評価を受けている建物だから問題ない」或いは「瑕疵担保保険に加入しているから問題ない」とまでいう建築業者がいます。ここで皆さんに理解して頂きたいのは、上記の何れの制度や保険等を利用した建物だからといって決して建築された建物や建築される建物に瑕疵が無いことを保証する制度(性格)のものではないということです。

その証拠に住宅性能保証は一定の性能を確保した住宅を建築する或いは引き渡すことを定めているだけであり、建物に瑕疵が無いことを保証する文言はどこにもありません。そして、瑕疵担保責任保険は一言でいえば実際に瑕疵があった場合に建築会社の保証能力を確保し建築主等を保護するためのものです。そもそも、住宅性能保証自体が瑕疵の無いことを保証するものであるならば住宅瑕疵担保責任保険の制度は必要がないはずです。従って、それぞれ制度の趣旨(本来の目的)が違うのです。ちなみに、実例としてここ1年半のうちにKJSで調査を行った建物で新築後半年から3年の建物(注文建築)で既に建て替えを行った建物が1棟、或いは建て替えを建築会社側が希望しているなど瑕疵の程度が激しい事案が2棟、その他にも重大な構造上の瑕疵の存在する建物が数棟ありました。無論、これらの建物はいずれも、住宅性能保証にいう中間検査や完了検査を受けた建物でしたし、更に住宅瑕疵担保責任保険(強制)にも加入している建物でした。

ところで、先般、福岡市近郊の建売分譲住宅購入予定の方からの依頼で完成新築建物の調査を行いました。当該建物は瑕疵保険加入、設計・建設評価を受けた建物です。しかし、以下のような問題点がありました。

床張り合板(ネダノン)の施工において、釘頭径が小さいうえ釘頭のめり込み深さが許容される範囲を全般に超えているなど床剛性が確保されていない可能性がありました。これはN釘又はCN釘以外の異種の釘が使用されている可能性があり「詳細を確認する必要がある」と判断をしました。

更に、畳下においては著しいカビやキワダレ(シミ)が認められました。構造用床合板の含水率は通常12%程度ですが、そのカビやキワダレの部分及び釘周囲等の15箇所を計測した結果、何れも18%~32%であり、その内12箇所が20%を超えていました。通常では有り得ない数値ですし、これでは著しいカビやキワダレ等が発生していても不思議ではありません。雨天時の養生不足によるものなのか、漏水等によるものなのかは詳細調査をしないと分かりません。いずれにしても床合板の十分な乾燥やカビの除去等が必要でしょう。

購入者の方が売買契約にあたりその旨(上記の2点)を建築会社Aへ確認してくれるよう申し入れをしたのですが、その結果、建築会社Aの回答は『そこまで言う客とは契約をいなくて良い。建設評価を受けている建物だから修繕も改善もするつもりはないし、その必要はない。』といった趣旨の回答があり、契約の予定は当日に流れてしまいました。

ここで建築会社Aの思惑がいろいろと見えてきます。

あくまでも設計・建設評価を受けている建物だから問題がないものと見做して他の客に販売してしまう。
今回の指摘や確認の要望を受け入れた場合、同分譲地内のその他の建物に対する不具合をも認めざるを得なくなる可能性があるためその影響(風評被害)等を回避するために、本件建物に関してのみ改善をして他の客に販売してしまう。つまり、他の建物については知らぬふりをして販売してしまおうとの思惑が疑われます。

いずれにしても、この建築会社Aは今回指摘を受けて不具合がある可能性を既に認識しているのですから、このことを購入者に告知しないで販売した場合は宅建業法に抵触する可能性も否定できません。無論、全てを確認又は改善したうえで販売するのであれば何ら問題ありませんが、では何故今回購入を決意していた客に対し『建設評価を受けている建物だから修繕も改善もするつもりはないし、その必要はない。』などと筋違いのことを言う必要があるのか。以下の写真に示すようなことは建設評価の項目にはないことくらい建築会社なら当然に知っているはずですが、それを知らぬふりしてカビが生えている部分等には畳を被せて隠し何もしらない素人の客に販売してしまうのか。

(左)畳下の構造用床合板に発生している カビやシミ等の状態 (中)床合板の含水率が28% (右)釘頭のめり込み深さが7.51mm

ともかく、これらの件について契約時に確認や改善等を要望するような客とは売買契約をしなくてもよいという建築会社Aの姿勢は建築会社としてはどうなのでしょうか。

福岡市近郊で分譲建売住宅の販売をしているケースで、この建築会社(株式会社A)の建売分譲住宅である場合は相当の見極めが必要です。尚、これらの建物は不動産業者が仲介や販売代理等を行っているケースもあるようです。

以上


 
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