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KJSレポート

 


 
建築士としてのコンプライアンスを問う
No.68-1 2011/10/17

今回は建築士の不誠実行為についてレポートします。

先般、ある新築建物(戸建住宅)の瑕疵検査において調査を行った建物に重大な欠陥のあることが判明しました。無論、大規模な改修工事を行わなければ改善はできません。建築主との同席のうえ相手方の責任者と当該Y建築士(設計者・同工事監理者)に対しその瑕疵の内容や指摘の根拠等を説明しました。その際、当該建築士は重大な瑕疵を含めて数十項目にわたる施工不備につき、特段の反論もなく概ねを認めていました。

欠陥住宅を現存させた、又は現存させてきた理由は設計図書を作成するにあたり自社で建築している工法等を理解していなかったこと。設計自体の不備や間違っている箇所が多数あること、全般にアバウトにしか表示していなかったこと。また、工事監理者でありながら実際には工事監理自体を行っていなかったこと。更に、製図においては別の設計士等に製図をさせ、よく確認もせずに盲印を押していたものと思われます。これらのことは、直接聞き取り確認を行った際に明確に分かりました。なぜなら“自身が入社したときからこのような施工方法であったため、特段の指示はしていない”という趣旨の発言がなされたからです。一定の工事監理もせず、そもそも設計図自体が間違っているのですから、真面な建物が建築されるはずがありません。

建築士は、設計や工事監理等を依頼しようとする者から委託を受けて一定の報酬額を受領して設計業務や工事監理等を行っているのです。従って、多数箇所間違っている図面を提出したり、そのことによって欠陥のある住宅が建築されるなどのことは許されません。今更ではあるものの訂正図面を要求しました。ところが、訂正したとする図面も数か所が間違っていたため再訂正を求めました。それでも再提出された図面には当初指摘を受けた重要な部分をアバウトに表示しているため詳細図を要求したのですが“提出します”と言っておきながら1ヶ月を過ぎても未だに提出はされていません。いずれにしても、当該建築士は職責を自覚しているのであれば今回再提出した矩計図についてどの部分が間違っていて、それをどのように訂正したのかを建築主に対して説明すべき義務と責任があるはずです。提出後2~3日以内にでも説明してほしい旨を伝えていたところ、「はい、分かりました」と言っておきながら、これも、一ヶ月半以上経っても知らんふり。この件につき建築主がそのY建築士に何度電話をしても社員自体が取り次がない。或いは電話に出ようともしないため、その上司に対しY建築士に訂正図面の説明をしてくれるよう申し入れをしたのですが、あろうことか、その上司は「KJSの山崎氏に説明をしてもらったらいかがですか」と言って突っぱねたそうです。どちらが加害者でどちらが被害者なのでしょう。それ以来、Y建築士は建築主側が電話をしても会社の看板の陰に隠れてしまい表に出てこようとしないといった始末です。

多大な迷惑をかけた建築主に対し素直に謝る又は説明をするなどのことは、自身の設計や工事監理の非を認めることと同時に建築会社としてのこれまでの非(瑕疵)をも認めることになると思って警戒しているのか、それとも社命なのか。入居後数ヶ月で大改修を行わなければならないほどの瑕疵のある建物を引き渡されていた建築主はどれだけ辛い思いをしているのか考えてほしいものです。建築主(ご家族)の苦しみが分からないのであれば建築士としてのコンプライアンスというより、それ以前に人間としての道徳や倫理観が欠如していると言わざるを得ません。それとも、建築士としての良心はあっても本当のことが言えないサラリーマン建築士の宿命とでもいうのでしょうか。

私は現在の仕事を行って来月で10年の期を迎えます。建築会社に従属している建築士で優秀な建築士にお会いしたことは何度もあります。しかし、いざとなった時に建築主の利益を守る側に立った建築士にはこれまで一度も(一人も)お会いしたことがありません。

≪ KJSレポート70に続く ≫

 
不動産売買(現状有姿)のこんなところに気をつけて
No.67 - 2011/10/17

今回の事例では不動産売買において、宅建業者が競売物件である中古住宅(倉庫等を含む)付き宅地を業として購入し一般の購入者に対し不誠実な方法で売却をした実例を紹介します。

問題は二つです。以下の略図を参考にしてください。

≪問題点-その1≫

不動産業者は現状有姿での売買を前提としていることを事前に買主に説明しています。無論、買主は中古住宅の購入であるため、土地や建物自体に仮に不具合等があったとしてもこのままの状態での取引(売買)なのだと解釈していました。
宅地建物の売買において「現状有姿」という言葉は一般的にそのような意味を差しますので、ここまでは特に問題点はありません。
しかし、図のように宅地A-1に2戸の建物が建っているのですが実際には登記簿上、三つの建物が建っていることになっています。つまり、Cの建物は存在していないにも関わらず、事前に「現状有姿」での売買であることを説明していたのだからCをも売買の対象とするというのです。勿論、売買の対象とするといっても不動産売買の価格(価値)には含まないのだから問題はないはずだというのですが、では、何故に実態の無いものを売買の対象とする必要があるのでしょうか。値引きをしているので少しの利益でも確保したいというのでしょうか。このような売買では買主側は以下のようなリスクを伴うことになります。

実態の無い建物に対しても所有権移転登記費用が発生すること。
滅失登記費用が数万円かかること。
銀行より融資を受けて購入するのですから実態の無いものに対して担保設定費用等がかかること。(そもそも、融資を行う銀行が実態の無いものに担保設定をすることはできないはずです。)
当初は土地と建物A・B(その他の諸条件は記載略)に対しての銀行の融資予約だったのですから条件変更に伴う銀行保証会社の再審査が発生するなどのことが予測されます。

F銀行にも、実態の無いものに担保設定を行うつもりなのか、また、このような取引を容認して融資ができるのかを確認したところ、やはり融資の条件に沿わない旨の回答がありました。それでも不動産業者は「あくまでも現状有姿での売買だ」と言い張るのですから売買は成立しなくても良いと言っているようなものです。
不動産業者は、現状有姿の意味は土地や建物の状態についてだけではなく、実態の無い建物の売買をも含むとして、そのリスクについてもプロとして事前に買主に説明しておくべきだったのではないでしょうか。地元では名のある不動産会社でありながら不誠実なことをするものです。結果としては、買主の費用負担で売主側に事前に抹消登記をさせることで事態をのりきったのですが、何とも後味の悪いものとなりました。

≪問題点-その2≫

本来、A-1B-2は一つの宅地(800m² )として売却される予定でしたが、事情によりA-1の敷地を600m² と、B-2の敷地を200m² として分割して売買をすることとし、取りあえずA-1の敷地を今回売買したうえで、その1年以内にB-2の宅地を同じA-1の買主へ○○○万円で売却することを要件としてA-1の宅地建物の売買(公簿)が成立しました。但し、1年以内に本件の買主がB-2の宅地購入の意思表示をその不動産業者(売主)にすれば、という条件付きです。
ところが、今回実測をしたうえで約定どおりA-1(600m² )の宅地(建物)の売買を成立させたものの、B-2の敷地面積は160m² しかないというのです。A-1B-2の宅地はそもそも登記簿上の面積は一宅地で800m² として売買されていたものであり、不動産業者(売主)・買主ともに全面積は800m² あるものと思っていたのです。業者側も800m² のうち600m² を差し引けば200m² 程度の敷地が残るはずと思っていたに違いありませんし、買主も残地(B-2)が200m² あるものとしてA-1の土地(建物)を購入していたのです。ところが分割(分筆)に伴い-40m² の減少となれば買主としては約定と違うのですから当然不服をいうでしょう。これに対し不動産業者は“A-1・B-2全体の合計面積の公簿売買であるから残地が200m² に足りなくても問題はないというのですが、ところがA-1の宅地建物の売買に際し不動産業者は買主に対しB-2の敷地は200m² を売買対象の面積とし、かつ、○○○万円で売却する旨の覚書を交付してA-1の宅地を売買しています。つまり、①面積、②金額、③1年以内に購入の意思表示、の最低限3つの条件付き売買となっているのですから、その一つの条件が欠けても成立しないことになります。
B-2の宅地(建物)の売買について、業者側は覚書に定める○○○万円で売却しようとすればB-2の敷地面積について200m² を確保しなければなりませんが、数量不足であっても金額について一切譲歩はしないといっています。さて、皆さんはどのような裁定になると思いますか?

以上

 
第三者検査を利用した不動産仲介の裏側
No.66 - 2011/4/6

今回は、新築建売住宅の不動産仲介に際し以下のようなケースがあったので皆さんにご紹介します。

まず、宅建業者Aは「自社で仲介する物件(中古住宅や新築住宅の場合)については第三者の建物診断をサービスでお付けします」とのふれ込みで集客を行い仲介業(宅建業)をしています。(以下の図を参照)

① 買主のBさんは仲介業者のAに対し新築の戸建て(建売)住宅を購入したいと考え物件の紹介を依頼しました。

② 仲介業者Aは都合よく建売業者Cが売りに出していた建築途中(完成間近)の物件をBさんに紹介。

 Bさんはその物件を気に入ってすぐに建築会社Cと売買(購入)契約をしました。

④そこで、仲介業者のAは当事務所(KJS)に対し建物調査の依頼をしました。
調査の結果、その新築途中の住宅は特段に大きな問題もなく、評価としてはまずまずといったところでした。しかし、小屋組みにおいての明らかな施工不備、その他に建築基準法に抵触はしないものの電気配線管の不備や外壁(外装材)の通気工法などにかかわる三つの事柄について指摘事項がありました。無論、物件の引渡し前ですから改善を行うのであれば少しでも早い時期がよいので、その日のうちに仲介業者Aに口頭で伝え、翌日には指摘の根拠となる資料等を仲介業者Aに届けていました。

それから数日後に仲介業者Aに報告書を届けた際、建築会社Cに対し改善の申入れを行ったのかを尋ねたところ、その申入れは行ったものの、その際に仲介業者Aに対し建築会社C『そのことをお客さんに(既に売買契約をしている買主のBに)言うつもりですか』と言ったとのこと。更に驚きなのは仲介業者Aはその事に対し『いや、私は言いはしないけども・・・』
こんなやり取りがあったとのこと。二重の驚きです。そこには業界の悪しき慣習(利害関係)というものがあり、建築会社(宅建業者)Cは仲介業者Aに対し、「仲介をさせてやっているのだから客には黙っていろ」と言う暗黙の牽制球を投げたのです。また、仲介業者Aは建築会社Cに仲介をさせてもらっているのだから建築会社Cに言い難いといった業者間の利害関係や思惑があるのです。無論、そのようなことは一般の方(買主Bさん)は知り得ない事でしょう。

仲介業者Aが不動産仲介に際し建物調査を付与していたのですから買主Bさんは調査の結果を知りたいらしく、引き渡しの際に建物調査報告書を要求しているそうです。仲介業者Aはその調査報告書を買主Bさんに渡さないわけにもいかないでしょう。調査の結果については遅かれ早かれ物件の引き渡しや決済の際には分かることですが、瑕疵(欠陥)があることを事前に知っていながら何もせずに黙って引渡しをさせてしまった場合、この件が後から発覚すれば仲介業者Aは建築会社(宅建業者)Cと同じく宅建業法違反になる可能性も出てきます。 無論、建築会社Cが施工不備を改善した後で買主Bさんに引き渡すのであれば何も問題はないのですが。しかし、建築会社(宅建業者)Cは瑕疵を認めようとせず『そのことをお客さんに言うつもりですか』と言っているのですから改善を行うつもりがなく、出来ればそのまま引き渡したいとの思惑があるようです (他に、その分譲地には同じ時期に完成予定の建物が数棟建っているのですから当然と言えば当然でしょう)。また、仲介業者Aも施工不備のあることを“買主のBさんには言わない"と建築会社(宅建業者)Cに対して言っているのですから誠実な対応は期待できない状態です。ちなみに、仲介業者Aは当事務所(KJS)に対し建物調査の依頼をする際「写真はあまり撮らなくてもいい。調査の時間は短くしてほしい。調査報告書は簡単でよいし、提出時期はずっと後でよい。」と言うなど、問題があったとしてもそれを表に出してほしくないような口ぶりでした。

施工不備(瑕疵)が存在するままでの物件の引き渡しは業者の曖昧な説明で買主Bさんが納得すれば可能かも知れませんし、或いは知らないままでの引渡しであれば可能かも知れません。しかし、「建物調査や建物診断付き仲介だから当社で仲介する物件は安心だ」ということをアピールして契約を誘引しておきながら、何か問題があった場合には知らぬふりをするのであれば、建物調査や診断付きということを利用して営業戦略(集客)のためだけに建物調査や診断を付加しているだけに過ぎないのではないでしょうか。更に、自社を信頼して物件の紹介(仲介)を依頼してくれたBさんに対する背信行為になるのではないでしょうか。 本来は、第三者検査(調査)を行った場合、その結果を踏まえ不備があるのであれば建築会社Cが適切な改善を行ったうえで引渡しがなされることが一番理想的なのですがどのような結末になるのかその行方は仲介業者(宅建業者)Aと建築会社(宅建業者)Cの消極的な両社に委ねられています。誠実な対応がなされれば好いのですが注視しておきたいと思います。また、皆さんにもこの結果が分かれば時期をみてお知らせしたいと思います。

以上


 
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