今回は、新築建売住宅の不動産仲介に際し以下のようなケースがあったので皆さんにご紹介します。
まず、宅建業者Aは「自社で仲介する物件(中古住宅や新築住宅の場合)については第三者の建物診断をサービスでお付けします」とのふれ込みで集客を行い仲介業(宅建業)をしています。(以下の図を参照)
① 買主のBさんは仲介業者のAに対し新築の戸建て(建売)住宅を購入したいと考え物件の紹介を依頼しました。
② 仲介業者Aは都合よく建売業者Cが売りに出していた建築途中(完成間近)の物件をBさんに紹介。
③ Bさんはその物件を気に入ってすぐに建築会社Cと売買(購入)契約をしました。
④そこで、仲介業者のAは当事務所(KJS)に対し建物調査の依頼をしました。
調査の結果、その新築途中の住宅は特段に大きな問題もなく、評価としてはまずまずといったところでした。しかし、小屋組みにおいての明らかな施工不備、その他に建築基準法に抵触はしないものの電気配線管の不備や外壁(外装材)の通気工法などにかかわる三つの事柄について指摘事項がありました。無論、物件の引渡し前ですから改善を行うのであれば少しでも早い時期がよいので、その日のうちに仲介業者Aに口頭で伝え、翌日には指摘の根拠となる資料等を仲介業者Aに届けていました。
それから数日後に仲介業者Aに報告書を届けた際、建築会社Cに対し改善の申入れを行ったのかを尋ねたところ、その申入れは行ったものの、その際に仲介業者Aに対し建築会社Cは『そのことをお客さんに(既に売買契約をしている買主のBに)言うつもりですか』と言ったとのこと。更に驚きなのは仲介業者Aはその事に対し『いや、私は言いはしないけども・・・』
こんなやり取りがあったとのこと。二重の驚きです。そこには業界の悪しき慣習(利害関係)というものがあり、建築会社(宅建業者)Cは仲介業者Aに対し、「仲介をさせてやっているのだから客には黙っていろ」と言う暗黙の牽制球を投げたのです。また、仲介業者Aは建築会社Cに仲介をさせてもらっているのだから建築会社Cに言い難いといった業者間の利害関係や思惑があるのです。無論、そのようなことは一般の方(買主Bさん)は知り得ない事でしょう。
仲介業者Aが不動産仲介に際し建物調査を付与していたのですから買主Bさんは調査の結果を知りたいらしく、引き渡しの際に建物調査報告書を要求しているそうです。仲介業者Aはその調査報告書を買主Bさんに渡さないわけにもいかないでしょう。調査の結果については遅かれ早かれ物件の引き渡しや決済の際には分かることですが、瑕疵(欠陥)があることを事前に知っていながら何もせずに黙って引渡しをさせてしまった場合、この件が後から発覚すれば仲介業者Aは建築会社(宅建業者)Cと同じく宅建業法違反になる可能性も出てきます。 無論、建築会社Cが施工不備を改善した後で買主Bさんに引き渡すのであれば何も問題はないのですが。しかし、建築会社(宅建業者)Cは瑕疵を認めようとせず『そのことをお客さんに言うつもりですか』と言っているのですから改善を行うつもりがなく、出来ればそのまま引き渡したいとの思惑があるようです
(他に、その分譲地には同じ時期に完成予定の建物が数棟建っているのですから当然と言えば当然でしょう)。また、仲介業者Aも施工不備のあることを“買主のBさんには言わない"と建築会社(宅建業者)Cに対して言っているのですから誠実な対応は期待できない状態です。ちなみに、仲介業者Aは当事務所(KJS)に対し建物調査の依頼をする際「写真はあまり撮らなくてもいい。調査の時間は短くしてほしい。調査報告書は簡単でよいし、提出時期はずっと後でよい。」と言うなど、問題があったとしてもそれを表に出してほしくないような口ぶりでした。
施工不備(瑕疵)が存在するままでの物件の引き渡しは業者の曖昧な説明で買主Bさんが納得すれば可能かも知れませんし、或いは知らないままでの引渡しであれば可能かも知れません。しかし、「建物調査や建物診断付き仲介だから当社で仲介する物件は安心だ」ということをアピールして契約を誘引しておきながら、何か問題があった場合には知らぬふりをするのであれば、建物調査や診断付きということを利用して営業戦略(集客)のためだけに建物調査や診断を付加しているだけに過ぎないのではないでしょうか。更に、自社を信頼して物件の紹介(仲介)を依頼してくれたBさんに対する背信行為になるのではないでしょうか。
本来は、第三者検査(調査)を行った場合、その結果を踏まえ不備があるのであれば建築会社Cが適切な改善を行ったうえで引渡しがなされることが一番理想的なのですがどのような結末になるのかその行方は仲介業者(宅建業者)Aと建築会社(宅建業者)Cの消極的な両社に委ねられています。誠実な対応がなされれば好いのですが注視しておきたいと思います。また、皆さんにもこの結果が分かれば時期をみてお知らせしたいと思います。
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