Y建築会社が建築した建物では、前回の小屋組における施工不備の件(KJSレポート73-1)に続き、さらに瑕疵の一つとして省令準耐火構造に関する施工不備が指摘されており、昨年、福岡地裁に提訴されている。
省令準耐火構造とは、住宅金融支援機構の融資等に特有の構造で、省令で定める基準に適合する住宅をいい、建築基準法で定める準耐火構造に準ずるもので耐火性能を持つ構造として、「①.外壁及び軒裏が、建築基準法第2条第8号に規定する防火構造であること。②.屋根が、建築基準法施行令第136条の2の2第1号及び第2号に掲げる技術的基準に適合するものであること。③.天井及び壁の室内に面する部分が、通常の火災時の過熱に15分間以上耐える性能を有するものであること。④.上記①~③に定めるもののほか、住宅の各部分が防火上支障のない構造であること。」などが詳細に規定されている。
しかし、本件建物の実情はどうなのか。調査の結果では、明らかに施工不良であることが分かる状態である。
- 1) 屋内防火被覆材の留め付け不良(全般)
- 2) 壁内ファイヤーストップ材の未設置(全般)
- 3) 壁防火被覆材の当て木(間柱等)の断面不足
- 4) 小屋裏の防火被覆材未施工(区画不備)
- 5) 小屋裏、天井部等部分の防火被覆不備
- 6) 小屋裏防火被覆材下地組の施工不良(天井野縁受け吊り木材の断面不足、天井野縁の間隔過大)
- 7) 押入内等の防火被覆材未施工(仕様不備)
- 8) 階段下収納天井部の防火被覆材の未施工
- 9) 住宅設備機器裏面及びダクトスペース部の防火被覆材の未施工
- 10) 設備機器、配管、照明器具等の防火被覆不備、等々・・・。
省令準耐火構造上の瑕疵について、当該建築士はフラット35の設計検査時には防火被覆上の詳細図も押印のうえ提出し、その被覆方法等を指定(指示)するなど、防火被覆等に関する一定の知識を備えていたものと解される。しかしながら、実際は本件に関する瑕疵(施工不備)だけでも17項目以上に及ぶなど、準耐火構造に関しては全くと言ってよいほど適切な施工が行われていない。すなわち、当該建築士(工事監理者)が工事監理を怠っていた結果である。 本件の防耐火構造に関しては、最初からその構造で施工するつもりがなかったのか、或いは、現場施工に関し誰も省令準耐火構造に関する知識を有する者がいなかったのか、いずれにせよ、小屋裏(天井裏)では見せ掛けだけとも取れるような防火被覆材(施工不備)のみが設置されている。
本件事案は建築主が特段に拘りをもって、省令準耐火構造という防火性能上安全性の高い建物を注文し、しかも、その仕様にするための別途追加費用を支払っていたにも係らず、その契約(注文)をした構造になっていないのだから瑕疵に該当しないはずもない。さらに、契約設計図書(仕様書を含む)では省令準耐火構造に関する旨の指示及び図示がなされており、かつ、確認申請時の設計検査においても省令準耐火構造とした設計図書で申請されている。従って、瑕疵(省令準耐火構造上の重大な欠陥)に該当する。尚、同社は中間検査等に合格している旨、反論しているようであるが、そもそも、その現場検査の申請書は当該Y建築士の虚偽の申請によって適合証明書が発行されている。
≪コメント≫
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←(小屋裏(天井裏))
当該部位の防火被覆材(プラスターボード)の外周部には本来16本の釘打ちが必要なところ5本しか打たれていない(各階小屋裏全般に釘打ち不足(手抜き工事))。
そもそも、矢印部には下地構成自体の不備により、釘を打つことすらできない状態である(小屋裏全般)
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←(天井裏)
天井裏の防火区画施工不備(防火被覆材の未施工(各階十数箇所)) |
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←(階段下)
物入れ天井部の防火被覆材(プラスターボード)の未施工 |
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←(天井裏)
写真は室内天井に設置されたダウンライトを天井裏から撮影。天井に穴が空いているのと同じだから、万一、火災が発生した場合、火炎が矢印のように室内から天井裏へと直接侵入する(十数箇所)。
準耐火構造としてはあまりにもお粗末すぎる。 |
本件建物の瑕疵を改修し、改めて省令準耐火構造とするためには、支払っていた費用の何十倍もの改修費用や大掛かりな工事が必要となる。そもそも、大胆な手抜き工事をした建物を引き渡しておきながら“お金返せばいいンでしょ”といったような話ではない。ちなみに、本件は省令準耐火構造で建築することを請負契約の特段の条件として建築契約を交わしている以上、民法634条1項但し書き「過分ノ費用」には当然該当しない。(最高裁判例)
Y建築会社では、省令準耐火構造として建築してきた建物について、釘間隔など誤った指示をしていたことを同社の建築士が証言している。従って、その他の省令準耐火構造として建築された建物についても過去相当数の建物に施工不良(瑕疵)のある可能性が高いこと。及び、消費者の利益の保護(建築主や購入者の安全性等)のために、引き続き瑕疵としての指摘の内容を掲載します。
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