Y建築会社が建築した建物では前回迄の小屋組や省令準耐火構造における施工不備の件(KJSレポート73-1・2)に続き、さらに瑕疵の一つとして外張り断熱材工法における施工不備が指摘されており、昨年、福岡地裁に提訴されている。
本件建物は、木造住宅工事仕様書(フラット35S仕様)、省エネルギー対策等級4に適合する住宅として建築(契約)されている。その省エネルギー性に関する基準に係る仕様1.4.2では、「断熱材はすき間無く施工する」と規定されている。
また、本件建物に使用された断熱材(アキレス社製キューワンボード)の標準施工マニュアルでは、「本標準施工マニュアルは『省エネルギー対策等級4』住宅型式認定仕様に準じて、標準施工方法が示されている」として各部の施工要領について説明と図示をしている。
しかし、本件建物の現況はどうなのか。調査の結果では、以下のことが明らかに分かる状態である。
1) 本件建物の設計図書では、小屋裏の外壁断熱材と屋根断熱材の取り合い部に隙間が生じないよう、壁断熱材の上端部は屋根断熱材の勾配に合わせた斜めの形状としている。
しかし、本件建物の外壁断熱材と屋根断熱材の取り合い部は、壁断熱材の上端部に傾斜をつけずに設置しているため、隙間や空間が生じている。この場合、その隙間部分に現場発泡ウレタン等による充填(断熱補強)が必要であるが、何らの措置もなされていない。よって、各階小屋裏(桁上部)の全般につき断熱欠損が認められる。
2) 小屋裏の棟木上部(棟換気部分を含む)の屋根断熱材の取り合い部についても、アキレス社キューワンボードの標準施工マニュアルで図示されているように、屋根断熱材同士の取り合い部にできる隙間や空間は、現場発泡ウレタン等で充填(断熱補強)をする必要がある。
しかし、本件建物には、そうした処置も全くなされていないため、小屋裏の棟木上部全般で取り合い部に著しい隙間(空間)が生じている。
注記:全般に気密防水テープは設置されていると思われるものの、気密に関する性能と断熱材の設置はその目的や意味を異にする。
3) 垂木受け補強材の未設置 本件建物は、外断熱工法による二重垂木方式(下部の本垂木と上部の通気垂木の間に厚み45㎜の断熱ボードを挟み込んでいる構造)である。したがって、屋根断熱材の設置に関し、軒桁上部、及び棟木上部等において、アキレス社のキューワンボード外張り断熱工法標準施工マニュアルでは、断熱材固定や小口補強等のために垂木受け補強材の設置をするよう規定している。
しかし、本件建物には全く設置されていない。
≪本件の瑕疵判断の基準≫
- 契約設計図書に不整合
- 住宅金融支援機構監修 木造住宅工事仕様書(フラット35S)平成22年改訂版、省エネルギー性に関する基準(省エネルギー対策等級4)に係る仕様1.4.2及び、7断熱工事7.4【断熱材等の施工】断熱材の施工7.4.2の1、4及び5。同項7.4.9屋根の施工の2、同項7.4.11注意事項等に不適合
- アキレス株式会社、キューワンボード外張り工法、標準施工マニュアルに不適合
≪追記≫
上記に指摘を行っている事柄以外に、床下基礎部など指摘事項(施工不備)はその他にも存在するが、記載(掲載)を省略している。
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≪ 棟木上部 ≫
・片流れ屋根の場合の断熱不良(全般) |
≪ 棟木上部 ≫
・寄棟、切妻屋根の場合の断熱欠損(全般) |
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・軒桁上部の断熱不良(全般) ・垂木受け補強材の未設置(全般) |
同社が建築した建物では断熱施工に関し、その他の建物でも同じ施工不備が認められている。さらに基礎や外壁防耐火構造等重大な瑕疵または欠陥として指摘される事柄があります。これらは建築基準法第1条にいう生命、健康、財産に直接の影響を及ぼし、かつ、過去相当の棟数に及んでいる可能性が高いなど、社会性があると判断されること。及び、消費者(建築主や購入者)の利益の保護のために、引き続きその内容を掲載します。
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