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KJSレポート

 


 
欠陥住宅建築シリーズ(Y建築会社)・・・・・追加写真掲載
No.73-1 - 2013/3/20

Y建築会社は現在、福岡県をはじめ九州三県にまたがり、主に木造軸組工法・外張り断熱工法を用いて住宅を建築している。年商は数十億円ともいわれる。しかし、同社が建築した建物では瑕疵(欠陥)の一つとして小屋組における施工不備が指摘されており、昨年、福岡地裁に提訴されている。

建築基準法施行令及び旧建設省告示1460号では、「構造耐力上主要な部分(小屋組を含む)の継手又は仕口にあっては、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他の国土交通大臣が定める構造方法により、その部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない(後段略)」と規定されている。よって、小屋組においては特段にひねり金物を設置する旨の具体的表示はないものの、但し、大臣が定める構造方法により、その部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならないという規定がある。つまり、①.大臣が定める構造方法(上記の緊結方法、または、ひねり金物等の性能認定を受けた金物の設置)を選定するか、②.或いは、その他の構造方法やその他の金物を設置する場合等は大臣が定める構造計算による安全性の確認.のいずれかが必要である。これらは建築における基本中の基本である。

しかし、同社の建物の小屋組では、建築基準法で定める構造計算による構造耐力上の安全性について確認されていないうえ、軒桁仕口部の緊結金物等(ひねり金物等)が未設置。さらに母屋部、棟木部、隅木部などの仕口等においても長ビス等の杜撰な施工が行われているとして、小屋組における基本的な安全性の欠如が指摘されている。
他方、信用調査会社の記事によれば、Y建築会社への取材では「欠陥はない」とのコメントが記述されている。従って、今後の裁判の経過や結果をみなければ、尚早な結論は出せないであろう。

しかし、実情はどうなのか。調査の結果、本件建物の小屋組では要所に長ビスが使用されており、①.その長ビスの設置位置の不良及び打ち込み深さ不足、木材への貫通や打ち外し等が軒桁部等の主要な構造材の仕口部に列をなして認められており、明らかに施工不良であることが分かる状態である。②.しかも、軒桁部のひねり金物等も未設置である。③.また、小屋組の上下垂木等の緊結についても所要部の緊結箇所について長ビス自体が省略されており、止め付け間隔が著しく過大な状態にある。これらの状態では、小屋組における構造耐力上の安全性が確保されているとは言い難いうえ、もはや構造計算等による安全性について確認できる状態にもない。

同社によれば、多数の打ち損じ等の長ビスはあくまでも補助的なものとし、所要部につき、省略されていると指摘される箇所の長ビスについては、見えない位置に設置しているから問題ないとしている模様。
その調査は容易であるから、同社の主張等を尊重し、公平かつ公な形で調査をしてみてはいかがであろうか。

小屋組における基本的な安全性が確保されていなければ(本件のような施工不備では)、地震や台風(近年では予期せぬ突風や竜巻なども発生している)などの災害が発生した際には、屋根の軒先部分が横風等の強風に煽られた場合(これを吹上力と言う)など、屋根自体がずれる、或いは最悪の場合、吹き飛んでしまう危険性もあり得るだろう。だからこそ、小屋組部分は建築基準法施行令で構造耐力上主要な部分として定義され、安全性に対する最低限の技術基準(施工基準)が定められている。Y建築会社では、以前から同じ長ビスを多用して建築していることから、酷似した施工不備が懸念される。

≪コメント≫

この長ビスは、最低限40mm以上又は45mm木部へ打ち込まなければ耐力は取れない。従って、この建物の屋根構成の材厚からすれば、桁部では長ビスが見えてはならないことになる。写真のような施工不備が列をなしている場合、どのような結果を招く事になるのか。そもそも、この長ビスは東日本パワーファスニング社が軒桁用として(ひねり金物等の代用品として)製造販売しているものではないうえ、性能認定を受けた金物でもない。同社では、別に軒桁専用の長ビス(日住木センターの性能試験済の「タルキック」という製品)を従前より製造販売している。

(写真は全て軒桁と垂木の仕口部分)

※長ビスの施工不備:全般

・小屋組の杜撰な施工により長ビスの打ち抜き、打ち外しが列を成している。その他は、軒桁部の全般に長ビスの打ち込み不足。

・これらの状態では、屋根自体がずれる、或いは最悪の場合、吹き飛んでしまう危険性もあり得る。

追加写真1
追加写真2

←※長ビス等の有無に関する確認状況

・軒桁と本垂木(上部の通気垂木を含む)の仕口部分につき、「見えない位置に設置している」とする長ビスは、見えている長ビス以外には一切認められない(小屋組全般)。

・仮に、ひねり金物等を後付けしても、軒先まで伸ばしている通気垂木(断熱ボードの上部)を下部の本垂木に適切に緊結していないため、吹上げ力等に対して意味がない。

 
追加写真3

Y建築会社はこれでも「欠陥はない」というつもりであろうか。同社は一定の瑕疵や欠陥については、提訴に至る前から、ある時期をもって上層部や管理建築士をはじめ、少なくとも工事関係の社員は既に認識しています。
しかし、万一、知っていながら建物を完成させてそのまま引き渡したり、或いは告知せずに売買契約等を締結していたとすれば不法行為及び宅建業法違反等にも抵触することになるでしょう。これは、かつての耐震偽装事件にいうヒューザーの○○社長と同じことであり、法人であるからにはそれだけの社会的責任があるということです。

同社が建築した建物では小屋組施工に関し、別の建物でも同種の施工不備が認められており、さらに、その他にも重大な瑕疵または欠陥として指摘を受けている事柄があります。これらは建築基準法第1条にいう生命、健康、財産に直接の影響を及ぼし、かつ、過去相当の棟数に及んでいる可能性が高いなど、社会性があると判断されること。及び、消費者(建築主や購入者)の利益の保護のために、引き続きその内容を掲載します。

本件の事案については、公判前の段階でY建築会社側より司法に対する潜脱的行為(虚偽の申告)がなされるなど、悪質性(悪意)が認められたため、建築主(訴訟人)の方の意向も踏まえて掲載しています。尚、掲載の内容についての問い合わせ等には、都合により一切応じることは出来ません。但し、本件に関し利害関係のあると思われる方からの問い合わせについては、一定範囲の情報を提供します。

関連:73-2, 73-3, 73-4, 73-5, 68-1, 70

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