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KJSレポート97 これらのどこが省令準耐火構造なのか!? No.97 - 2020/05/25

 今回は、省令準耐火構造に関する悪質な施工不備(手抜き工事)についてレポートします。
 〝省令準耐火構造”とは、住宅金融支援機構の融資等に特有の構造で、省令で定める基準に適合する住宅をいい、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防耐火性能をもつ構造として、以下のように定められている。なお、窓等の開口部、内部の建具(引戸、ドア)に関する規定はない。他の法令上の制約があれば、それに従うこと。
 ①外壁及び軒裏が、建築基準法第2条8号に規定する防火構造であること。
 ②屋根が、建築基準法施工令第136条2の2の1号及び2号に掲げる技術基準に適合すること。
 ③天井及び壁の室内に面する部分が、通常の火災の加熱に15分間以上耐える性能を有するものであること。
 ④上記①~③に定めるもののほか、住宅の各部分が防火上支障のない構造であること。
【留意事項】
≪各室防火とファイヤーストップ材≫
 省令準耐火構造は、住宅を支える主要な構造部分を防火被覆するとともに、火災時に火炎が住宅全体に燃え広がることを一定時間抑止する「各室防火」の考えを取り入れている。
 各室防火では、住宅内の一部で出火しても容易に他の室へ延焼しないよう、各室の壁及び天井に防火被覆を設ける必要がある。加えて、防火被覆が破られて壁内部や天井裏に火炎が入った場合に、天井裏等を伝わって短時間で火炎が燃え広がることを防ぐファイヤーストップ材の設置が重要となる。
 ファイヤーストップ材は、壁内部及び天井裏において火炎の通り道をふさぐ必要があるため、「壁と壁との取り合い部」、「床または天井と壁との取り合い部(最下階を除く)」、「間仕切り壁上部と横架材または上階床面下部との間」にそれぞれ設置する。特に間仕切り壁上部に設けるファイヤーストップ材の設置を失念しないよう注意する・・・。
 ※(独)住宅金融支援機構 編著 木造住宅工事仕様書2019年版 18.省令準耐火構造の住宅の仕様より一部転載

 ところが、この度、省令準耐火構造の建物として調査を行った建物では、以下写真のように重要な上記施工基準(規定)を遵守していないことが判明しています。

① 廊下上部(南側)
 ▲天井裏にふところがある場合、間仕切り壁の梁上下には防火被覆材(石膏ボード等)の設置が必要。
 また、建物外周部(中央の破線内)にも防火被覆材(石膏ボード等)の設置が必要。

② 同上(東側)
 ▲赤破線矢印:1階で火災が発生した場合、火炎は赤破線矢印のように、2階壁内(居室)へと容易に侵入し、1階壁内→1階天井裏(2階床下)全般→2階壁内(居室)へと延焼する。
 *壁内にファイヤーストップ材(石膏ボード・木材等)は未施工

③ 同上(西側)

 上階(2階)には居室(寝室・子供室等)が存在している。

④ 同上(北側)

 これらのどこが省令準耐火構造なのか!?

 指摘の事柄(写真)は、施工不備の極一部です。省令準耐火構造としては、唯一、1階の天井部(上階の床がある場合)に所定の強化石膏ボード(不燃材)を設置しているのみです。すなわち、これは省令準耐火構造で建築する(契約している)という認識があったという証拠でしょう。ところが、実際には手間の掛かる部分で、省令準耐火構造としての所定の施工を全くしていなかったということです。そのうえ、同社は火災保険会社に対し、いわゆるT構造(準耐火構造)である旨申告し、保険料を半分以下に抑えるよう誤魔化していたということです。
 ここで、一番の被害者は建築主(ご家族)です。一般の住宅より防火上安全性が高いものと信じていたものが、いざという時に設計上(契約上)期待される防火性能(避難時間等)が確保されていなかったのですから・・・。

 このような場合、火災保険会社は、これまでの数年分の保険料を追徴するうえ、今後の保険料は2倍程度高くなるというのですから、施主としては、まさに踏んだり蹴ったり(踏まれたり蹴られたり)です。Sホームさん、しっかり責任取って下さいネ!

以上


 ※同社の建物では、数年前にも同様の建物(極めて著しい手抜き工事)がありました。これまで「省令準耐火構造の建物」であることを売りにして建築受注をしていたようですから、ほかにも同様の建物が沢山あるのではないでしょうか?“皆さん、気をつけましょう。”

 
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