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KJSレポート94 建築ではガス配管工事にも気を付けて! No.94 - 2019/07/01

1)ガス配管工事の施工不良
 ガス配管の埋設管深さや他の埋設物との離隔距離等は、㈳日本ガス協会の供給管・内管指針(工事編)で、埋設配管における留意点として、(1)敷地内屋外埋設管の埋設深さは、車両重量等によって管が損傷を受けるおそれの無い深さとする。(2)配管は、他設備配との間に必要な離隔距離を確保する。としている(表7-1、解表7-1)。さらに、離隔距離では、“工事,維持管理及び安全保持のため、他設備管との間に離隔距離を確保する必要がある”と解説している。
 これらの規定は、ガス工事,維持管理及び安全保持とともに、他の配管のメンテナンス(掘削等)の際に誤ってガス管の破断や破損等を避けることなどを目的として設けられている規定です。無論、戸建て住宅の敷地内についても同様です。

 今般、住宅新築の現場(建築検査)において、上記の規定が全く無視された配管工事が行われていることが判明しました。
 本件宅内(車路)では、径50A以下の場合で20cm以上の離隔距離(解表7-1)が必要です。ところが、屋外給排水管設備工事に伴い、ガス管も排水管と同じ管路に敷設しており、排水管パイプの横に沿わせている、あるいは排水管パイプ上端に乗せ掛けているなど、明らかに10cmないし20cm未満です。また、これらの工事による何等の対策も実施されていない。
 発見時点で、Mホーム建築現場担当者に「他の配管との離隔距離の既定はないのか?」と注意を促したところ、Sガス会社の工事担当者から即座にMホーム現場担当者を介して「一般の宅地内ではそのような規定は無い」との回答がありました。しかし、ガス工事において内管規定が無いなどのことはありません!

 改めてSガス会社へ確認したところ、㈳日本ガス協会の基準と同様の内規が存在することが判明(内管規定は各ガス事業者によって基準が異なる場合がある)。本件は、同施工基準(内規)に依り難い特段の事情がある訳でもありません。ただ、ガス管を適切な位置(上図:黄線部分)に埋設しようとすれば、そのための管路を掘削しなければならず、時間と労力・費用が掛かるため、排水設備管の管路(掘削溝)に合わせて埋設したことが原因であり、さらに、Sガス会社の工事担当者にも施工基準を遵守するという意識が欠如していたことが原因です。よって、後日、同社及び関連のガス設備会社の幹部等が建築主に謝罪のうえ、2日を掛けてガス配管の移設工事(1日目は21:00迄の突貫工事)が行われました。

※ガス配管施工状況写真(PDF)
 しかし、ここで皆さんに発信したいのは、第三者検査(KJS)によって注意を促しているにも拘わらず、「一般の宅地内ではそのような規定は無い」などと無視をして不適切工事を続行したことから、Sガス会社はこれまでも同じような不適切工事を他の現場でも行ってきた可能性が高いということです。

※ガス管埋設の深さ(車路)については、同基準に拠り300㎜以上(表7-1)としているが、これとは別に雨水・汚水管の排水設備工事でも管の埋設深さを200㎜以上ないし450㎜以上確保することが既定されている(下水道排水設備技術基準等)。しかし、その排水管の埋設深さについても不備があったため、やはり、やり替え工事を行った。そのため、同時に行った車路の設備管埋設深さ不足及びガス配管埋設深さ不足についても取り合えず回避されていたという経緯があります。

2)ガス配管工事に伴う基礎の斫り
 本件建物(宅内)のガス工事では、上記1)ガス配管工事施工不良とは別に取り返しのつかない驚きの不適切工事が為されていました。それはガスメーター設置の配管立ち上げのために建築物の基礎の斫り工事を行ったというものです。これも特段に基礎の斫り工事を行わなければ配管ができない理由は全くありません。ただ、継手・エルボを使用せずに直管でメーターまで立ち上げたいために布基礎底盤部分の一部を(鉄筋が露出するまで)斫り取ったというものです。

 ガスの配管を単純に(配管工事を簡単に)するために、基礎コンクリートを斫り取るなどの事は論外です。この建物は引渡し直前の新築建物でありながら、基礎底盤の著しい断面欠損、コンクリート被り厚不足(地盤面下)など、基礎構造に欠陥のある建物となってしまいました。本件は、基礎自体の補修や補強をすればある程度の問題は解消されるかも知れません。しかし、施主としては数千万円もかけて一生に一度の土地購入ないし新築をしたのに、最初から基礎に欠陥のある建物(補強等をしなければならい建物)を引き渡されるなんて許容できるでしょうか。

 ちなみに、何故このようなバカげた事をしたのかSガス会社へ尋ねたところ、「工事担当者は、捨てコンクリートであると認識していたようだ。」と、有り得ない回答でしたが、そもそも本件建物の基礎では、捨てコンクリートは施工されていません。さらに言えば、配筋された18cm厚みの(堅固な)捨てコンクリートがあるとでも言うのでしょうか。
 前記1)に同じく、第三者検査が随時検査をしているにも拘わらず、見ていないところでは当然の如くこのようなことをしている。これは建築物の瑕疵に対する認識が欠如している証拠です。壁付けのガスメーター設置の際には、同社はこれまでも同じように基礎底盤の斫り工事を行っていたのではないかと疑わざるを得ません。


≪最後に≫
ガス配管工事の施工不良(手抜き工事)は、一歩間違えると大事故にも繋がり兼ねません。Sガス会社は何のために内管規定(内規)を設けているのか、その規定の意味を改めて認識してもらいたいものです。
また、ガス配管工事に伴う法令及び内管規定(内規)は、当然、建物基礎の斫りを行うことを想定したものではなく、“建物の基礎を斫り取って配管してはならない”などの常識にも満たないレベルの規定はありません。ただし、故意に行った行為であることから不法行為責任が問われる可能性もあるでしょう。

≪情報の提供について≫
特に九州地区で都市ガス工事を行った建物(宅地)で“もしかして”と思われる方は当事務所にお問合せ下さい。利害関係のある消費者の方からのお問い合わせであれば、ハウスメーカー(不誠実な対応の元請け)、及び、実際に施工を行ったSガス会社とそのグループ会社等の情報提供をします。(電話番号記載のうえメールでお問合せ下さい。利害関係者であることを確認させて頂いたうえで情報提供をします)

以上


 
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