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KJSレポート

 


 
KJSレポート88 建築士さん、何でこんな設計したの?Ⅰ
壁内通気工法と省令準耐火構造の矛盾
No.88 - 2018/08/20

 建物の外装材としてサイディング板を設置する場合、外装材メーカーの施工基準及び瑕疵担保設計施工基準等によって、「外壁通気工法(サイディング板の背面に通気層を確保する工法)」が、今や標準仕様となっています。
 ところで、皆さんは上記の外壁通気工法と違って、屋内側の「壁内通気工法」という工法をご存知でしょうか? これは、床下→外壁→天井裏→外壁→小屋裏といったように、夏はひんやりした空気が壁内を循環するように工夫された建物のことです。つまり、建物外周に面する構造材全般(横架材全般)に通気溝(欠き込み)を施し、換気設備機器と併せて壁内の通気の循環を促しているのです。
 小屋裏などで外周壁内の通気の状態を確認してみると、確かに、ス~と空気が上がってきていることが分かります。効果はそれなりに絶大かも知れません。

エッ~!! この建物は“省令準耐火構造”で建築された建物ですか!

※「省令準耐火構造」とは、住宅金融支援機構の融資等に特有の構造で、省令で定める基準に適合する住宅をいい、建築基準法で定める準耐火構造に準ずるもので耐火性能を持つ構造として、以下のように定められています。
 ①外壁及び軒裏が、建築基準法第2条第8号に規定する防火構造であること。
 ②屋根が、建築基準法施行令第136条の2の2第1号及び第2号に掲げる技術的基準に適合するものであること。
 ③天井及び壁の室内に面する部分が、通常の火災時の加熱に15分間以上耐える性能を有するものであること。
 ④ ①~③に定めるもののほか、住宅の各部分が防火上支障のない構造であること。
 省令準耐火構造の目的は、外部からの延焼防止、各室防火、他室への延焼遅延等です。すなわち、外周壁や間仕切り壁を通して上階に火炎が侵入しないように、壁の頂部などにはファイヤーストップ材や当て木を設置して延焼防止を施しているのが省令準耐火構造の建物なのです。

さて、前段の「壁内通気工法」を採用した建物が省令準耐火構造となり得るのでしょうか?建築に詳しくない方も、もうお分かりですね。単純なことですが省令準耐火構造壁内通気工法相反関係にあるのです(特殊な配慮をした認定工法は別ですが)。
 ※省令準耐火構造において、壁内に通気を促すことは、他方、天井裏や上階への火炎の侵入を許すことになる(外周壁全般)。したがって、住宅金融支援機構でも認めていません!

建築士さん、何でこんな設計したの?“いや~、私がこの建築会社に入ったときから既にあった工法でしたから・・・”などと驚愕の言い訳!
 建築士さん、建築確認申請書では貴方の名前が設計者として記載されていますが、実際に設計をしたのは貴方ではないのですか?・・・(沈黙!)

 上記は、瑕疵検査後において、実際にその建築会社と所属建築士に尋ねた事柄の一部です。本件は、設計や建築における超基本中の基本なのですが、業界にはこの程度のことを知らない、或いは、知らない振りをする無責任なサラリーマン建築士が沢山いることを、皆さんも認識しておきましょう。
 ちなみに、この建築会社では皆さんが良くご存じの有名なタレントさんがCMに出演していますし、当該建築会社がこれまで建築してきた同仕様の建物は数百棟の単位ではないでしょう!“今後は優秀な顧問弁護士さんのお知恵を借りて全力でしらばっくれるしかありませんね”
 それが社会に通用するか否かは大いに疑問ですが・・・。

KJS山﨑


 
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