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KJSレポート85 これが建築業界の驚きの実態-Ⅲ ≪建材メーカーと建築会社≫ No.85 - 2016/08/18

これが建築業界の驚きの実態-Ⅲ ≪建材メーカーと建築会社≫

 今回のレポートでは、建築の外装サイディング材施工において、ある建築会社の施工不備について建材メーカーK社の不適切な対応の例を紹介します。

 以下の図は、外装サイディング板の上下張り分け接合部(目地部分)の断面図です。

(外壁通気工法として通気胴縁を壁内に設置している場合)

断面図Bの参考写真(水平シーリング目地)

上断面図(略図)の説明

① 図Aのように、サイディング板の厚みが異なる場合の上下張り分けは段差にあった水切り材を設置し縁を切る。

② 図Aのように上下張り分けとする場合、図A´のように縦胴縁間に水切り鋼板の下地受け材(横胴縁)の設置が必要。

③ 図Bのようにサイディング板の横張り上下張り分け接合はしない。(水平シーリング目地のみによる接合は
目地切れによる漏水の恐れがある)

④ 仮に、図Bの場合であったとしても、少なくとも図B´のように縦胴縁間にジョイナーの下地受け材(横胴縁)の設置が必要。

■ 外装材に関する施工基準および法令等

1) 瑕疵担保責任保険「設計施工基準」では、通気胴縁で「サイディング板のジョイント部に用いるものは90mm以上の
幅とする」としている。

2) 日本建築学会標準仕様書・同解説(JASS27)では、上下階で張り分けるような場合は中間水切りを使用し、胴縁の幅は
サイディング接合部は90mm程度(以上)の胴縁を設置することとしている。

3) 日本窯業外装材協会(NYG)では、サイディング接合部で90mm未満での施工を禁止事項としている。

4) 建材メーカーK社では、厚みの違うサイディング板の上下張り分け接合部について、図Aのように水切り材を
設置することとしている。

5) ニチハ(株)等でも、厚みの違うサイディング板の上下張り分け接合部について、図Aのように水切り材を設置することと
している。また、上下の張り分けについて水平シーリング目地のみによる接合(図B・B´)は目地切れによる
漏水の恐れがあるため明確に「禁止事項・免責事項」としている。

6) 建築基準法22条指定地域以上の地域(外壁防火規定のある地域)などでは、外壁の防火構造方法について
国土交通大臣が定めた構造方法または大臣認定の認定を受けた構造方法のいずれかとする必要があります。
外装サイディング板で施工する場合、後者の大臣認定の認定を受けた構造方法とする必要があるのですが、
その場合、接合部(目地部分の背面)の下地には受け材(柱・間柱・胴縁等)の設置が要求されている。

以上のように、外装サイディング工事においては外装材自体の耐久性能確保・防火性能確保・防水性確保等の品質確保ために「しなければならないこと、してはならないこと」等が規定されています。
 ※上記施工基準の1)~3)は6)により受け材(胴縁)の設置を前提として記載している。

■ 問題点1 調査を行った建物の外装サイディング材の施工不備について(建材等メーカーK社製品)

ア.図B(または参考写真)のように、サイディング板の上下の張り分け接合部について、水切り材が設置されておらず、
縁を切っていない。

イ.図Bのように、サイディング板の合いじゃくり部分を上下ともに切断し、水平シーリング目地のみによる
接合がなされている。

ウ.図Bのように、目地部分(ジョイナー)の背面に受け材(下地板)が設置されていない。

※上記ア.イないしウの部分は外壁目地の全般ではないものの一部ではない。

本件では、特に上下の接合部で水切りをせず水平シーリング目地のみによる接合、そして受け材(下地板)の未設置など、恐らく建築の素人が行った外装工事でしょう。品確法上の瑕疵であると同時に、建築基準法において要求される防火性能が確保されていない列があるのですから、当然外壁防耐火構造上(防火性能上)の瑕疵(欠陥)です。

■ 問題点2 建物の瑕疵についての外装材メーカー等の対応

問題点1.ア~ウに掲げる施工がなされていることにつき、建材メーカーK社に確認したところ、「上下の張り分けについて水平シーリング目地の接合及び水切り材の未設置は標準施工外であるものの禁止しているわけではない。」また、目地部の受け材(横胴縁)についても「設置するように図示していないので禁止としてはいない」との回答がありました。つまり、図Aの場合については図A´のように受け材(横胴縁)を設置するよう規定をしていない.というのです(図Bについても同じ)。さらには「地方の支店や営業所の判断でその建築会社に対して可としているのであれば、例えこのような標準施工外の施工であっても製品の本体保証をする」との本社及び当該支店の回答です! ちなみに、K社の施工要領書の注意書きには上記の回答と真逆のことが記載されている。

外壁は長年、最も過酷な条件に曝される部位です。よって、建材メーカー各社が設計施工資料集や設計施工マニュアル等を公表している目的は「品確法」に鑑み自社製品の性能確保とともに外装材の耐久性の確保や漏水等の不具合を回避するために施工要領書等を公表(ウェブ公開等)しているのです。それにも拘わらず、建材メーカーK社の対応は、建物の不具合や消費者側が不利益を被ることがあっても特定の建築会社との利害関係を優先した結果と言うべきでしょう。
 本件は防火規定違反の瑕疵(欠陥)になることを前以て建材メーカーK社には忠告をしているのですが、「本社及び当該支店がそのように(問題ないと)言っているのであればその通りでしょう」などと極めて不誠実な回答しかなされません。これが建材メーカーK社の企業体質とでもいうのでしょうか。最終的には“設計者の判断だ”“建築会社の責任だ”などと責任転嫁をして逃げることは可能かも知れません。しかし、大手建材メーカーとして消費者等に対し知っていながら知らぬ振りをすることが果たして許されるのでしょうか。

建材メーカーK社が特定の建築会社に対し例えどんなに庇ってあげても、本件の受け材の未設置等は建築基準法の外壁防耐火構造上の違反(瑕疵・欠陥)であることに違いありません。したがって、建材メーカーK社がサイディング板自体の製品本体保証をするかしないかの問題ではありません。

それにしても、建築会社はサイディング板の横継目に水切り材を設置しないことや、その背面に受け材を設置しないことなどで、釘代や胴縁の材料代、設置の手間代を節約し、どれだけの利益に繋がるというのでしょう。恐らく「壁の中だからばれることはない」或いは「建材メーカーK社も認めている」などと高をくくっていたのかも知れません。しかし、外壁防火規定違反が発覚したからには適正かつ適法な状態にしなければなりません。さて、どれだけの手間と改修費用がかかると思いますか。建築会社及び建材メーカーK社は建築主のためにも当然きっちりとやり替えるべき責任があります。

≪コメント≫
 第三者の建築士による工事監理や建築検査については、一定の費用がかかることから、「もったいない」あるいは「自分達だけはそんなことはない」と考えている方も多いでことしょう。しかし、本件のように施工不備による建築基準法違反であることが明らかな事案であっても建築会社と建材メーカーなどが一緒になって何とか誤魔化そうとするものです。
 このような問題に至らないようにするためには第三者検査・監理など転ばぬ先の杖が必要なのではないでしょうか。

以上、KJS


 
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