皆さんは今回レポートしているような契約形態が現在でも普通に存在することを御存知ですか? ≪実際のご相談事例より≫
■契約書や設計図書等が無い状態での建築契約
- 正式な契約書や約款が無い
- 見積り書をもらっていない
- 本体工事と諸経費の明細がない
- 仕上げ表や仕様書が無いままでの簡単な契約を交わしている。
(建物の仕様内容はモデル住宅の建物を見て口頭で決めていた)
- 設計図をもらっていない(着工してから簡単なものをもらった)
- 建築確認通知書を見たことがない、自らは確認していない
(*建築確認申請が不要な地域もあります)
- 間取りの充分な確認をしていない。
(建築中に間取りの確認をして、間取りの不備に気付いて変更を要望した)
- 地元の大きな工務店で契約したが、その会社の詳しい内容は知らない。
(近所の人が良いと言っていたから決めた。)
※このように、全てをお任せコースにしてしまっては、トラブルが起きない方が不思議です。
■その結果
Q.当然、建物契約に含まれているはずと思っていた浄化槽等の設置費用(工事代)を追加請求されているが、本当に含まれていないのが普通なのでしょうか?
Q.建物の設計費用は支払っていたのに、浄化槽設置の為の設計費用と称して後から16万円を追加請求されたが本当に必要なものなのですか?建築費又は建物本体の設計費用の中に全て入っていると思っていたのですが、これが普通なのでしょうか?
Q.例:台所のそばにトイレがきているので変更してくれるように行ったが、業者には『今更言われても変更できない』などと言われたが?
・時期によってはできる場合もありますが、給配水管設備などがチグハグな状態になったり、追加工事費用を要求されても仕方が無いこともあります。
Q.建築士は設計の意図を建築主に事前に説明しておかなければならない義務や、責任があると聞きましたが本当でしょうか?
・確かにそのことは建築士法第18条-3に規定されています。
Q.自分達が建築現場に殆んど行く時間がないので、専門家ではない身内に時々現場を見てもらっている。
“手抜き工事をしているのではないか”と聞いたが、はっきり分からないまま工事が進んでいる為、不安でたまらないがどうしたら良いか。
・・・等々の相談があります。
※このように、契約書や設計図書等が無い状態での建築契約では、本当に支払うべき必要のある費用なのか否か、そして、支払う必要のある費用とすれば適切な費用なのかという問題もありますが、それが契約時点で曖昧にされているのでトラブルになる場合が多く、相手方との交渉や解決に時間が掛かったり、双方が感情的になるケースも少なくありません。
※建築中に余りの不安に駆られて『建築中の検査をしてもらえませんか』といった相談もあるのですが、いざとなると、“強く出て機嫌を損ねるとかえって手抜き工事をされてしまうのではないか”といった懸念からなのか、遠慮してしまう方も少なくありません。
・本来、「建築契約」の意味とは、建築会社は法に適った契約どおりの建物を引き渡さなければならない義務と責任があり、その対価として契約した費用(報酬)をきちんと支払ってもらう権利があるのです。その一方、発注者や購入者はその費用をきちんと建築会社に支払わなければならない義務と責任があり、そのかわりに契約に則した建物をきちんと建築して引き渡してもらうという当然の権利があることは言うまでもないことです。大きな買い物をするのに、不安や納得のいかないことが有るのであれば、遠慮をする必要があるのでしょうか。
※実際に、建築主の方からの御相談があった際に建築途中の現場検査に行ってみると案の定ということもあり、やり替え工事の要請をいきなりしなければならない場合があります。それでも建築中だからこそ出来ることもあり、逆に完成後や入居後の不具合や瑕疵欠陥であれば、双方共に高いリスクを背負うことになります。
■トラブルの発生時に施主の方がよく言われる例として
*○○さんからの紹介があったから信用して契約したのに
*同じ町内の建築会社だったから信用して契約したのに
*大手の建築会社だったから信用して契約したのに
*建築会社を信用して契約したのだから
*私達は素人だから・・・
といった言葉をよく耳にしますが、それだけに建築会社に期待や信頼を置いての発注(購入)であったことが伺えます。しかし、現実には建築会社のモラル・法や行政の保護に期待するだけでは欠陥住宅の被害は防げないのが現状です。勿論、消費者側が悪いということではありませんが、建築は契約までに全ての7~8割が決まってしまうと言っても過言ではないくらいですから、契約前に建築について何を優先させるかが重要なポイントです。
まとめ
消費者が大きな買い物で泣かないためにはどうしたらいいのか。朝日新聞の生活欄に、実際に欠陥住宅の被害に苦しんでいる方の言葉が掲載されていましたので、その一部を少し紹介します。
≪木造3階・戸建て住宅・入居6ヶ月≫
*建築中に不備を工務店に指摘をしたら「大丈夫です、監理は社内の専門家がやっています」といわれて反論できなかった。
*完成後、違法建築になっている問題が次々に発覚。仕事の合間に工務店との交渉に時間を費やしストレスから体調も崩してしまった。
*建築前に外部の専門家に監理を依頼することも検討したが、仕様を充実させることを優先してしまった。「数十万円を出し惜しんでさえいなければ」と悔やむ日々を送っている。
*「大丈夫です」「それが普通です」と言われても絶対うのみにせず、専門家に相談し、納得して建築することです。
といった内容で、第三者検査の専門家に要所をチェックしてもらうことの必要性を強調されています。
何百件と家を建てたことがある業者と、めったにない買い物をする消費者では知識も経験も違いが大きすぎます。できれば、建築や購入の計画段階からプロのサポートや、第三者の建築検査を入れると大変有益かつ安心です。また、建売住宅や既存住宅を買う場合も契約前に専門家に検査をしてもらうことをすすめます。
|