KJSレポート73-1(小屋組構造上の重大な欠陥)
本件に関する施工不備は、建築基準法に抵触する瑕疵欠陥であることに違いは無いが、問題は、台風・突風・竜巻等が発生し、屋根部分が吹上げられるなどの被害が懸念されることである。
実際に災害等が発生した際、本来、適切な工事をしていたならば被害は無かったかも知れない、或いは軽微な被害で済んだはずの被害が拡大していたとしても、当然、建築会社側は、「想定外の自然災害であった」などと主張する(争う)であろう。その際、理不尽なことではあるが、法的には本件の瑕疵とその事象との因果関係を施主側が立証(証明)しなければならない(可能か不可能かは読者の方で各自考えてもらいたい)。これが現状の欠陥を放置していた場合の大きな問題点の一つである。
KJSレポート73-2(省令準耐火構造の重大な欠陥)
本件に関する施工不備は、設計で期待(要求)した準耐火性能が全く確保されていない。無論、建築主は一定の耐火性能(家族の安全性)を得るためにその追加費用を建築会社に支払い、そのことを契約(建築)の条件としていた。従って、その耐火構造にしないで(見せ掛けだけをして)金員を受領することは詐欺行為に匹敵するほどの請負契約違反(背信行為)である。しかし、Y建築会社は「本件は建築基準法によって要求される基準ではないから瑕疵としての基準が無い」或いは、「受領していた費用を返金すれば足りる」と主張する。社会の常識では考えられない卑劣な言い逃れである。
断熱構造施工に関する施工不備(屋根・基礎廻り等の断熱材の施工不良及び補強不備等)は、ある程度の気密が取れていれば体感的には分かり難いため、瑕疵(欠陥部)であることを施主が認識し難い。本件は補修等をしない限り、本来確保されるべき断熱性能は永久に確保されない。
また、同社の建物では、断熱ボードを設置する際の構造上の補強材(土台部・中間部・屋根部(垂木受け補強材))も設置していない。これらは、断熱材メーカーが将来断熱材にずれ下がり等の不具合を発生させないために技術指導(規定)をしているものである。それにも係らず、補強材等を省いてしまう理由は手抜き工事以外にない。
KJSレポート73-4(防耐火構造上の重大な欠陥)
Y建築会社の建物(住宅)では、外壁部に建築基準法によって要求されている(本来あるべき)防耐火性能が確保されていない建物がある。当然、万一近隣で火災があった場合など要求されている避難時間より避難時間が短い。したがって、防火規定違反をしている建物は、人の生命を脅かし兼ねない重大な瑕疵欠陥である。
無論、このような瑕疵欠陥のある建物(住宅)は、不法行為や安全性の欠如等一定の条件を満たす場合「損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできない。また、不動産としての社会経済的交換価値も無い」などと言う厳しい高裁判例(平成22年6月17日)もあるほどだ。
懸念されるのは、同社の建物であるがゆえに、同職人等が携わっていたからには1棟や2棟の事ではなく、これまでの建物の相当数に及んでいる可能性を否定できないことだ。
軸組(床組)において火打ち土台は軸組の構造上必要であるから設置が規定されている。その部材の一部欠如や欠損等は、軸組構造上の部分的弱点が床剛性の欠陥となり耐震上の不具合が生じる可能性がある。これらの手抜き工事も、複数の建物に認められていることから、軸組構造に知識のない、或いは認識の低い同設備業者等が日常的に行っていた施工である可能性を否定できない。これらは、中間検査時の検査の有り方が云々というまえに、当該建築士が適切な工事監理を行っていなかった結果である。
Y建築会社には、上記以外にも設計自体の問題点や工事監理上の問題点と合せて、数十項目にわたる多数の瑕疵欠陥が指摘されている。ここで全ての事柄を具体的に記載はしないが、しかし、例えば外装板等住宅建材メーカーが規定している施工マニュアルや設計施工資料集(施工基準)など、いわゆる標準施工に反した施工が多数行われている。さらに木造住宅工事仕様書(フラット35)を設計図書として契約しているが、これにも反した施工が多数行われている。
これらについて、同社は建築基準法や瑕疵担保履行法にいう設計施工基準等に明記されていないなどとして、上記の、建材メーカーが規定している施工マニュアルや設計施工資料集等に従う必要はないと主張している。住宅建材メーカーが規定している施工マニュアルや設計施工資料集(施工基準)は、当該建材メーカー等が自社製品について不具合が発生しないように推奨、或いは規定している施工基準であるから、逆に同施工基準に従わないということは、すなわち建材メーカーとしては自社製品について保証できないということであり、「自社製品であっても保証しない」ということを明記している。
従って、Y建築会社は建材メーカーの簡単な施工基準(標準施工)さえ遵守しないのであれば、その旨を建築契約前に契約者に対して告知しておくべきであろうし、その際のリスク(不利益)についても契約者が十分理解(納得)できるよう説明したうえで建築契約をすべきである。
(*尚、本件の問題については、建築会社側より施主(契約者)に対し「当社には10年の瑕疵担保責任があり、当社が10年間は責任を持つ、或いは保証をするので心配ない」などと馬鹿げた説明がなされる場合が多いので注意が必要である。)
また、設計図書である木造住宅工事仕様書の利用についても、そのフラット35の仕様で契約していながら「木造住宅工事仕様書は設計図書ではない」などと稚拙なことをいう。その仕様で施工しないのであれば、その旨を契約者に対して建築契約前に告知しておくべきであろう。それをせずに瑕疵には該当しないなどの主張は係争を長引かせるための茶番としか言えない。
以上、KJS |