しかし、今回調査を行った建物のその他に重大な構造上の欠陥がある住宅が存在する可能性を知っていながら或いは指摘されていながら同社は何ら調査をしようともせず知らぬ振りをしている為、敢えてこのホームページにてその内容を掲載します。無論、仮に当該建築会社から営業妨害等との主張による係争に発展したとしてもその事実が何ら変わるわけではなく、人の生命に関わることなのですから敢えて掲載をします。
上記のA、Bに掲げる事柄は何れも建築基準法違反となる重大な瑕疵(欠陥)です。各階床については火打ち材が設置されていないのと同じ事であり、いわゆる耐力壁についても設計された耐震壁としての機能を果たしていない状態であり危険な建物が建築されていたのです。今回は主に釘種の不備について解説をします。
≪床下張り合板部の調査写真≫
(A)- 1.釘頭の径;7.03㎜<7.9㎜
(A)- 2.釘頭の径;7.28㎜<7.9㎜
(A)- 3.釘頭の径;6.37㎜<7.9㎜
(A)- 4.釘頭のめり込み深さ;3.6㎜
(A)釘種の不備による瑕疵(欠陥)
この厚みの構造用床合板(24㎜厚さ)を施工する場合はN75又はCN75の釘、つまり、75㎜長さ以上の釘を使用しなければなりません。それ以下の釘を使用した場合は建築基準法違反になります。
剛床構造用合板の釘種について(以下、釘種の記号についてアルファベットの後の数字は概ね釘の長さを示す)日本工業規格JIS.A5508
N75の釘頭径
7.9㎜、 胴径3.4㎜、釘の色;素地
N65の釘頭径
7.3㎜、 胴径3.05㎜、釘の色;素地
N50の釘頭径
6.6㎜、 胴径2.75㎜、釘の色;素地
左写真の数値と上段の釘頭の径を比較してみると規定ではN75以上の釘を使用すべきところN65或いはN50の釘が使用されていることが分かります。
24㎜厚さの構造用床合板に対しN50の釘を使用するなどのことは非常識というより悪質と言わざるを得ません。更に釘の頭径や胴径が小さいゆえに(A)-4.の写真で分かるように3.6㎜も合板にめり込んでいます。また、規定では15㎝以内の間隔で釘を打たなければなりませんが、あるところはそれ以下、あるところは18~20㎝としている等杜撰な工事がなされていました。
そもそも、釘のめり込みや釘間隔が違法だという以前に釘種自体が違法であり大変怖いことなのです。また、このような施工不備がありながら床組の構成についても畳下の部分については設計図書や仕様規定を無視した構造で構成されており上記の不備と併せて床組構造上の欠陥(建築基準法違反)となっています。
≪釘種の比較≫≪釘種の比較について≫
N50とNC50との釘頭径の大きさや胴径は見た目にも歴然としていますが、そのパンチング抵抗比(打ち抜き抵抗比)はN50を
1とした場合NC50は
0.58という結果しか出ていません。
尚、使用釘種の間違いなどを無くすためN釘は素地色としNC50は金色(黄)に着色されています。
≪耐力壁合板部の調査写真≫
(B)- 1.釘頭の径;4.78㎜<6.6㎜
(B)- 2.釘の胴径;2.00㎜<2.75㎜
(B)- 3.釘頭のめり込み深さ;2.51㎜
(B)壁合板に使用すべき釘種の不備
この構造用壁合板(9.0㎜厚み)を施工する場合はN50又はCN50(50㎜長さ)の釘を使用しなければなりません。また、合板の釘打ち間隔は150㎜以内と規定されています。それ以下の釘を使用した場合やそれ以上の間隔で打っている場合は建築基準法違反になります。
面材耐力壁合板の釘種について
N50 の釘頭径
6.6㎜、胴径
2.75㎜、釘の色;素地
NC50の釘頭径
4.8㎜、胴径
2.1㎜、釘の色;金または黄色(造作専用釘;耐力壁には使用不可
左写真の数値と上段の釘頭の径や胴径を比較してみると、規定ではN50以上の釘を使用すべきところNC50の釘が使用されていることが分かります。
9.0㎜厚さの構造用合板に対しNC50の造作専用釘を使用するなどのことは非常識も甚だしく危険なことなのです。更に(B)-3の写真で分かるように釘の頭径や胴径が小さいゆえに2.5㎜も合板にめり込んでいます。また、規定では15㎝以内の間隔で釘を打たなければなりませんが、部分的に19㎝前後となっているところが多数認められました。
これは、釘を節約したというより手間を節約したものと思われますが、更には合板の中央等一定の列をなして釘打ち自体をしていないことが判明しています。これも、釘打ち不足・釘間隔や釘のめり込みによる不備という以前に釘種自体が違法なのですから構造上安全性が欠如した状態であり大変危険なことなのです。
本来使用すべき釘N50の性能を1とすれば、使用されているNC50という釘の性能は0.54でありその性能差(性能比)は歴然としています。つまり、分かり易く例えれば1棟の建築に際し約10.000本の釘を打つべきところ、5.400本以下の釘しか使用していないのと同じことです。関係したその他の不備も加えればそれ以下ともいえる状態でしょう。
以上の事から建築士の方なら床組と耐力壁の密接な相互関係、つまり、構造力学的にみれば水平荷重等外力に対して抵抗出来るはずがないどころか危険な建物であることが容易にお分かりでしょう。しかも、この建物は基準法上いわゆる重たい屋根で建築(計算)されている建物なのですから更に危険度は高くなります。従って、現状では万一瞬間的な外力等が加わった場合等、それを耐え得ることは困難と思われ、倒壊の危険性すら誰しも否定できないのです。これらの建物は主要構造部に重大な瑕疵を抱えた安全性の欠如した建物であるといわざるを得ません。
Tホームのテレビコマーシャルではコスト削減等による低価格を強調しているようですが、上記で説明しているように安全性まで削減されることは許されません。ともあれ、今回調査を行った建物以外にもその大工はこの建物と他の現場を掛け持ちで受け持っていたとの証言があります。また、本件の建物を施工した大工はTホームにおいて今回の建物が初めて受注した現場ではなくそれ以前にも複数棟建ててきていることを建築会社は認めています。(このような場合、大工だけが悪い訳ではありません。無論、工事監理者の重大な監理ミスです。)従って、この建築会社が受注しその大工が施工したその他の複数の建物についても、上記のような安全性の欠如した建物が建築されいた可能性を否定できませんし、当事者であるTホーム側も否定していません。
勿論、建築会社はその大工が施工をした現場がどこにあり、何棟なのか何十棟携わっていたのか分かっているはずですから、関係した建物の調査を行う責任があるでしょうし、その上で同等の瑕疵があるのであれば瑕疵修補をすべき責任があるのです。それにも関わらず同社は調査をしようともしないどころか、何も知らずに居住している方々に対し知っていながら知らぬ振りをしているとすれば社会的犯罪に近いのではないでしょうか。
この件については、瑕疵が重大すぎるため業務上の守秘義務よりも告知義務(責任)のほうが重要と判断されるためTホームにおいて誠実な対応がなされなかった場合は各行政等への通告も辞さない旨を本年8月20日に伝えていました。しかし、同社は2ヵ月以上経った現在でも何も無かったかのように口を拭っています。この間に万一地震等の災害が発生した場合誰が責任を取れるというのでしょうか。余りの人命軽視の姿勢に唯憤りを感じるだけでは済まされません。
本来であればその他の建物についても調査をし、同等の不備があった場合は是正を促したいところですが、KJSは建物調査に際し業務上重大な瑕疵(事実)を知り得た第三者にしかすぎず、同社に対し調査等を指示或いは要求するなどの権限や権利は全くありません。従って、各関係団体等(特定行政庁)へ証拠等の提出とともに情報の提供を行っています。無論、情報の提供については当事務所としても相応のリスクを伴うことになりますが、敢えて情報等の提供をしているのですから建築指導課等各行政においても適切な対応を期待したいところです。
ちなみに、同社の建築した過去の建物(築3年)においても同等の施工不備による瑕疵が認められていました。現在はフランチャイズを変更しLハウスに変わっているようですが当時は今回と同じTホームで建築された建物です。現在係争中であるため詳細な記述は控えますが、やはり耐力壁(耐震壁等)の手抜き工事による重大な瑕疵が判明していました。従って今回で2棟目であり、その他にも耐力壁や床剛性に係る重大な瑕疵のある建物の存在が大いに危惧されるところです。構造躯体に関する欠陥は重大な結果をもたらすことは言うまでもありません。適切な工事監理もせず、人の生命すら軽視しているとすれば建築会社及び建築士としてのモラルや責任が大いに問われるものと思います。
これまでに記述している事柄から判断して、皆さんは当事務所が瑕疵検査を行った建物がたまたま重大な瑕疵のある建物であったと思いますか。勿論、同社の建物の全てに重大な瑕疵があるというのではありません。しかし、その大工が手掛けていた建物、それらの建築士が設計或いは工事監理をしたとされる建物、そして、概ね3年くらい前に建築された建物、更にそれらの支店が手掛けていたエリアの住宅に限られるものと思われます。
これらの件については誤った情報の独り歩きやいたずらな混乱を避けるため敢えてこのホームページで社名やエリア等については明記していませんが、この建築会社(Tホーム)で建築し、かつ、そのエリアと思われる地域で建築されているなど、明らかに利害関係のあると思われる方からの問い合わせがありましたら出来る限りの情報を提供します。但し、本件掲載の目的やこれらの情報提供等の目的はあくまでも人命尊重の為のみでありその他には一切ありません。