皆さんはご存知ですか? 例えば、万一地盤沈下などによって建物自体が傾斜したときなど、地盤調査を行なった保証会社がその保証を行なうことがあります。
基礎や建物の水平傾斜についての保証基準を通常5/1000ミリ以上の傾斜が発生した場合と定めている会社があるようですが、その傾斜の判断の仕方について以下の図のように、それぞれ違うことがあり注意が必要です。
上図のように、両社とも5/1000ミリ以上の建物傾斜が発生した場合と規定しているのですが、A社は免責事項として建物の水平長さ(10.0m)に対して5/1000ミリ以上の建物傾斜が発生した場合と規定しており、B社は『品確法の住宅性能表示制度』の既存住宅性能評価の基準に則り3.0m以上離れている2点の間を結ぶ直線の水平面に対する角度について5/1000ミリ以上の建物傾斜が発生した場合に保証すると規定しているのです。
つまり、同じ5/1000ミリ以上の建物傾斜であってもB社は15ミリ以上になっていた場合は地盤保証をするということであり、片やA社では最大50ミリ以上の傾斜にならなければ保証はしないと規定しているのですから雲泥の差があるのです。 また、地盤沈下(不同沈下)のケースは例-1.や例-2.のような場合などいろいろなケースがあるのですから、例-2.のような不同沈下による建物傾斜の場合に例-1.(A社)のような規定では著しく不合理な基準と言わざるを得ません。
実例として、実際にある建物の1階6帖の一方向において床水平の計測をしたら3.0mの間で18.0ミリの傾斜(高低差)、つまり6/1000程度の傾斜が発生している建物がありました。この場合、B社では保証の対象内であるものが、A社の保証規定に照らせばそれは1.8/1000でしかないことになり保証の対象外になってしまうのです。偶さか、それが屋内床面の施工精度だけの問題であれば改修工事等で済ませることも可能な場合もあるでしょうが、事象が地盤の沈下に起因するものであれば、建物のみの改修では根本的な解決は有り得ないどころか、むしろ傾斜が進行する可能性さえもあるのです。
建物の瑕疵(欠陥)という意味においては・・・
平成12年建設省大臣告示第1653号は「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」として、「不具合事象の発生と構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性との相関関係」について、不具合事象の程度を以下の3段階に区分し、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性を住宅の床の傾斜については、
*「3/1000未満の勾配の傾斜」・・・・・・・・・瑕疵が存する可能性が低い
*「3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜」・・・瑕疵が存する可能性が一定度存する
*「6/1000以上の勾配の傾斜」・・・・・・・・・瑕疵が存する可能性が高い
としています。しかし、この技術的基準は構造耐力上主要な部分における実際の瑕疵の有無を特定するためのものではないため、*「3/1000未満の勾配の傾斜」にしても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する場合があり、また、「6/1000以上の勾配の傾斜」にしても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存しない場合もあること」を留意すべきとして定められ、あくまでも住宅紛争審査会の審査における参考基準であり、『直ちに欠陥判断の基準となるわけではないことを留意すべき』としています。
実際の運用に当たって建築会社等では取り合えず3.0/1000程度の建物傾斜を一定の施工精度の基準として、あえて瑕疵としての自社基準は設けていない場合など曖昧さが見受けられます。また、地盤保証会社においては瑕疵保証(地盤保証)の基準として規定(運用)している数値は5/1000以上の建物傾斜(床勾配)がある場合としていることや、その見方にしても上記のように建物の水平長さ(総延長間)を基準としていたり、3.0m以上離れている2点の間を結ぶ直線の水平面に対する角度についてとしている場合があるなど矛盾が存在していることも確かです。
そもそも、上記の3段階の基準となったのは1.5/1000と言われており、この基準を基に作成されたものとされています。 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性を住宅の床の傾斜について、6/1000以上の床勾配の不具合事象などは、欠陥が存在することが容易に認定できるほどの酷い状態ですが、実際運用されている瑕疵の基準としての数値は3/1000どころか勝手に5/1000以上という基準で運用されています。このことは欠陥を主張する建築主側にとっては不利な数値と言え、むしろ欠陥を否定する業者側にとって有利な数値や見方として援用されている状態と言えます。
ちなみに、最初は施工精度が良くて問題無かったものが後から地盤沈下などの原因により一定度以上の傾斜が発生したものが瑕疵であり、最初から施工精度が著しく悪くて一定度以上の傾斜があったものは瑕疵には該当しないのかと言えば、やはり社会通念上必要とされる性能を超える定度の傾斜であれば瑕疵に該当するものと解釈するのが妥当だと思われます。 |