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KJSレポート

 

“発信” 『外装材の製品保証』の重要性について No.40 - 2006/7/24

皆さんは建築材料等に『製品保証』があることを御存知ですか?

一般的には知られていないことが多いようですが、『製品保証』とは建築契約の目的や建物の性能上大変重要且つ必要なことなのです。

住宅性能表示や、性能保証、10年の瑕疵担保責任と類似している為、建築会社でさえ勘違いや混同しているところが多いのですが、特に一般消費者(建築主)の方にはそんなものがあること自体全く知られていないのが実情のようです。

では『製品保証』とはいったい何なのでしょうか?
例えば、建物の外装材として使用するサイディング板等の場合では「メーカーが保証する製品の保証条件」として

①外壁を通気工法にすること(平成13年より)

②通気胴縁の樹種とその厚みの確保、

③開口部廻りなどその施工箇所や施工方法、透湿防水シートの品質と施工方法及び防水テープの施工、

④外装材の継ぎ手部材の設置方法、

⑤切り口の処理方法、

⑥専用金具や釘の仕様

⑦認定技術者による施工等々・・・

が詳細に定められており、それに見合わない施工がなされていた場合には自社の製品であってもその外装材メーカーは製品保証をしないことになっているのです。
また、このことは外装材メーカーで作っている日本窯業外装材協会(NYG)でも標準施工規定として統一されていることなのです。

◆標準施工の目的とは・・・
  1. 外装材の性能を末永く維持させること

  2. 外壁に求められる性能を発揮させること

  3. 外壁の防火・耐火認定仕様を達成すること

  4. 住宅性能表示等による諸性能を達成すること

  5. 不具合の発生を防止すること
    (外装板自体の耐久性や劣化に対する影響・浮きや亀裂等による雨水の浸入等)

  6. 品質保証契約の際の必要条件となる

などとされています。〔設計施工資料集(外装編より)〕

従って、その標準施工に適った適切な施工がなされていなかった場合には、当然上記のような性能が保てないことになるのです。

それは建築建材に限らず、電化製品等でも製造物責任(PL)法がありますが、それには当然免責事項があり“消費者側が「適切な使用の注意事項」を守っていなかった場合、生産者の責任については免責される場合がある”といったことと同じ事です。

つまり、建築会社の施工が規定の標準施工に従った施工をせずに不具合が発生した場合には、外装材のメーカーがその製品自体の保証をしません。ですから、建築契約時には住宅建築に使用する一切の建材や資材・住宅設備機器等についてもそのメーカーがその製品の品質について保証のできる施工方法で施工してもらわなければなりません。

そもそも、何故外装材協会で標準施工が設けられているのか。

その外装材メーカーの製品の信頼性を高め販売促進を図る為でもあり、外装材自体の不具合によって発生する雨水の浸入など瑕疵担保責任に対する危機管理と言ってもよいのではないでしょうか。その為には外装材自体の不具合によるものなのか、施工上の不備に起因したものなのか線引きをしておく必要があります。

あるメーカーは製品保証のできる施工内容できちんと施工されていれば商品本体の保証及び、塗膜の10年保証を実施しているところもあるくらいです。 (保証の対象者;住宅会社、工務店等に対して)

社会通念上、建築契約には住宅(建物)の性能について当然そのような性能は備わっているものと思いがちですが、実際にそんなことはありません。


ちなみに、間違った施工がなされているときなど、当事務所の指摘や改善要請に対して各建築会社の決まり文句は・・・

① 当社はこれまでもこの方法でやってきた。

② 他社もこの方法でやっている(施工している)。

③ 製品の保証書まで出してくれと言われたことが無い。

④そのような仕様では客と契約をしていない。

⑤ そうであったとしても建築会社は10年の瑕疵担保責任があり、その中に入っていることだから
心配ない。当社が保証する。

⑥ これまで、この方法でクレームや問題が発生したことはない。

⑦ 問題があれば当社はきちんとアフターメンテの体制を取っている。

⑧ 行政の中間検査に通っているから問題ない。

などと的の外れた同じ決まり文句を平気で言うのですが、全く問題を履き違えています。

では、『雨水の浸入を防止すべき建物外部に使用する外装板(サイディング)については、そのメーカーが製品保証をできる施工を当社はしていません』と、 建築契約の前にその事を建築会社が施主に説明していたとしたら施主は契約をすると思いますか? また、このレポートをご覧の貴方は契約をしますか?
一般常識で考えてもそんな契約をする人はいないでしょう。
それ程の重要なことなのです。それを消費者(建築主や購入者)に説明をせずに契約・建築・販売をすることは『契約の瑕疵』と言うべきです。


また、業者の言い分は『雨漏りするかもしれないが、住宅性能保証や瑕疵担保責任があり、当社が10年間保証をするから安心して引き取って住んでくれ』または、食品に例えれば『BSEに感染しているが10年間は当社が命の保証をするから安心して食べてほしい』と身勝手なことを言っているようなものなのです。事前に感染が分かっているものを貴方は食べることができますか?
話題を元に戻して、言うまでもなくそんな不具合が潜んでいる建物に対して35年間も欠陥住宅ローンを支払っていくことは誰しもいやでしょう。
要は、後からでは欠陥または瑕疵になることを先に指摘されているのですから、その事を工事途中に知った上で完成させ、強引に引き渡そうとするのならば、それは瑕疵と言うより『債務不履行及び不法行為』以外の何ものでもないのです。
そして、“行政の行なう中間検査や完了検査に合格している”といっても図面との整合性を見るだけなのですから、その行政の検査は建物の性能や瑕疵等に該当するところまで検査対象とはしていません。
それを、さも建物の全てにおいてお墨付きをもらっているかのように言ったり、思わせたりするのは論外です。


『隠れた瑕疵』を抱えたまま引き取り後から不具合が発生した場合、皆さんがどのようなリスクを抱え込むことになるのか想像できますか?・・・

①まず、不具合が発生したときにその原因と因果関係を誰かが証明しなければなりません。建築会社が証明してくれるのでしょうか?非や不具合を認めてくれなければ誰かにその証明を依頼するしかないでしょうし、そのためには費用が掛かることになるでしょう。

②次に、誰がその相手方と交渉をするのでしょうか?交渉は容易なことではありません。また、その時に交渉の相手である建築会社が存在しているとは限りません。

③仮に その施工会社が存在していて、不具合や瑕疵を認めたとしても多額の費用が掛かる場合は根本的な修繕がなされるとは限りません。
10 年保証が過ぎるまで、その場しのぎの応急的な修繕しかしようとしないことが多いのです。

④また 、建築会社がその不具合に関する原因を認めなかった場合は当然法的な場で争うのか、または妥協するのかを選択しなければなりません。争う場合は、相当の精神的なリスクを背負って数年間戦わなければなりません。

⑤ ちなみに『住宅性能表示制度』を利用した建物に瑕疵(欠陥)が発生した場合でも、指定住宅紛争処理機関による「斡旋・調停・仲裁」がなされるものの、その瑕疵(欠陥)についての証明は、やはり誰かがしなくてはならず、その仲裁等が不調になれば裁判しかありません。(紛争処理の斡旋-調停-仲裁のあり方には諸条件がありますが、ここでは省略します)

    

≪結論・まとめ≫

消費者(発注者や購入者)の当然の権利として、各使用建材や機器の製品保証がなされる施工や品質を要求することは当然のことなのです。

※建築契約時には・・・
① 『引渡し時には、住宅建築に使用した一切の建材や資材・住宅機器等についてそのメーカーがその製品の品質等についての保証書を発行してもらい、施主に渡すこと』として、製品保証の出るような施工をすることを契約の条件として契約書に特記してもらいましょう。

② さらに、上記の①が厳守されていなかった場合は、改修、取替えをすること。場合によっては契約の白紙撤回等の条項を付けておくことです。

※これらの条件を付していなければ何も言えないということではありませんが、条件を付していれば問題があった場合に解決が容易または早いということです。

≪注意≫
外装板の製品保証は施主からの要望があった場合に限り、建築会社の要請により建築会社に対してそのメーカーが出すことになっており、施主からの要望がなければ普通に出しているものではありません。尚、 保証書の申請をメーカーにするのは、その施工をした建築会社が施工内容を自社チェックしたもので申請するのですから注意は必要です。


KJSは建築検査に際し、今回レポートしているように①建築契約書や設計図書など契約の仕様に即した内容で建築されているのか。②建築資材等の品質チェック、施工方法(施工品質)の検査。③建築基準法やその他の関係法令と、瑕疵担保責任に該当するような施工不備がないかを主にチェックしています。 殆んど工事の検査監理と言ってよい内容であり、100%建築主の立場で行なっています。
 
■“ 必見!『欠陥住宅判例にみられる施工不備のいろいろ』---(1) No.39 - 2006/6/1

今や欠陥住宅に関する訴訟は年間数千件にも及び、ある建築会社は一社で数百件を超える訴訟やトラブルを抱えていると言われています。そのような建築会社ほどテレビコマーシャルでの印象は大変良いイメージを発信しているのですが、プロの目でみれば契約形態や実際の施工にそのイメージとの大きなギャップが見えてきます。ある意味消費者への薄利多売ならぬ問題多売ではないかとさえ思われるほどです。

私共 KJS は、そのような建築会社が建築している最中の建物を時々目にするのですが、“このような施工では数年のうちに不具合が出てしまうのに、まだこんな施工をやっているのか”と驚かされるような施工が目につくことがあります。そんな時に思うことは、信頼して発注している建築主のことをこの会社は何も考えていないのだろうか!故意か未熟なのか何れにしても、それらのことを施主は何も知らずに(知らされずに)喜んで引き取り、そこに住まい、一生住宅ローンを支払っていくのだろうかと憤りを感じるばかりです。

建築主は、そんな不具合があることなど何も知らされない方が幸せな場合もあるのでしょうが、また、余計なお節介かも知れませんが、何とも矛盾を感じるものです。

今回は、建築基準法等に適合していないことなどはもとより、欠陥住宅として瑕疵担保責任に該当しており、実際に訴訟事例にみられる主な関係法令と施工不備についてレポートします。

■近年の訴訟と判例にみられる主な法令等の概念図

各建築関係法令違反及び、技術的水準に関する建物の瑕疵は、その殆どが民法の瑕疵担保責任と不法行為又はその両方に含まれることになります。

■近年の判決により瑕疵が認められ原告(消費者)側が勝訴した施工不備等の具体的な法令と実例

〔 1 〕建築の瑕疵に関する主な法令

① 建築基準法・施工令・告示・条例等の違反工事

・基準法に抵触する不適合な品質と施工全般

・業者が行なった違法改造などの脱法行為

② 建築士法違反と不法行為

・名義貸しを行なった建築士の責任

・不適切な工事監理を行った場合や、工事監理を行わなかったことにより、欠陥住宅を現出させた工事監理者の責任等

※ 国交省ホームページ参照:平成 17 ・ 18 年度一級建築士の処分事例について(第一回~三回)

③住宅の品質確保の促進等に関する法律・同施工令・告示違反

・建設住宅性能評価書等に表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことの義務違反等

④ 日本建築学会標準仕様書(JASS等)、公庫標準仕様書等の各規定違反

・注意- 1 ;公庫仕様(利用)での契約でなくても公庫仕様に準ずると言及して契約していれば瑕疵、又は不法行為とみなされる場合あり。

・注意- 2 ;通常の請負契約の形態であっても日本建築学会標準仕様や日本建築センター・ JASS 等の諸基準や指針が採用され違法性を認めた判例があります。

⑤ 宅地造成規制法、同施工令違反

・ 擁壁の設計や施工など建築基準法に準ずるところの違法性が認められています。

⑥宅地建物取引業法違反と不法行為

・土地、建物についての不具合を知っていて又は、容易に知りえる立場にありながら説明をせずに契約や引き渡しをした場合など

⑦  消費者契約法違反

・不実の告知や消費者に不利な事柄の不告知(契約や契約行為自体に瑕疵がある場合等)

⑧  主たる契約の目的に関する仕様内容違反による瑕疵と不法行為(品質と性能)

・例えば:梁や柱の大きさについて基準法に強度上適合していることを建物が完成した後から証明しても、その目的物が契約上『特段』に定められた設計図の仕様寸法に反している場合等。

⑨  建材等の施工規定違反による瑕疵

・瑕疵の定義である、社会通念上必要とされる性能の欠如に抵触

⑩  建設業法違反と不法行為による瑕疵

・業法第 18 条;建設工事の請負契約の原則

・業法第 20 条;建設工事の見積り等

・業法第 22 条;一括下請けの禁止

・業法第 25 条の 25 ;施工技術の確保に関すること

⑪  その他の関係法令違反による瑕疵と不法行為

・上記の各法令等を契約内容に含めていた場合は違反や瑕疵又は不法行為になる場合と、含めていなくても違反や不法行為となる場合があり、逆に含めていなければ認められなかった場合もあります。尚、具体的な経緯については省略していますので御了承下さい。

〔 2 〕建築の瑕疵に関する主な具体例 (構造:住居を対象とした全ての構造の建築物)

≪地盤≫

①  宅地造成工事の施工不備よる地盤沈下

・擁壁工事の設計や施工不備(割り栗石地業、配筋、コンクリート、水抜き穴の未設置等)による傾きや不等沈下

・埋め戻しの際の転圧不足による不等沈下

・不純物の混入や埋設等による不等沈下(建て替え時にも注意)

≪基礎≫

①  その地盤に対して不適切な基礎設計や施工(補強杭、地中梁、割り栗石地業、配筋、コンクリート強度に関すること等)

・砕石の転圧不足や厚み不足

・捨てコンクリートの未施工

・基礎及びベース部の寸法不足

・脱枠までのコンクリート養生期間の不足

・基礎低盤や立ち上がりのコンクリート 被り厚不足・ジャンカ・亀裂等

・基礎内部の地盤が外部より低い又は、止水の不備

≪構造(躯体)≫

①  基礎と土台木の緊結不足や芯ズレ等の施工不良

②  床組みや小屋組みの継ぎ手位置と仕口の施工不良

③  筋交いの不足や未設置等軸組みに関する施工不備

④  部材の断面寸法不足又は欠損

⑤  各所要構造金物の未設置や設置方法の不備等

⑥  溶接接合の方法又は溶接自体の不備(鉄骨造)

⑦  コンクリートの打設時の温度管理ミスや、雨天時の打設による硬化不良等

⑧  コンクリート躯体の 養生期間の不足・被り厚不足・ジャンカ・亀裂等 ( RC 造)

≪防水≫

①  建物外部の雨水の進入に係る各部の施工不良全般

・基礎内への雨水の浸入

・窓周囲や開口部など防水紙の施工不備や防水テープ等の未施工

・屋根部や、外壁と下屋との取り合い部の施工不良による漏水

・パラペット笠木部、貫通口周囲、バルコニー床の防水不良

≪断熱材≫

①  所要箇所への未敷設や欠如など施工方法の不備

・土台の際や、外部に面する「胴差し」上下部の施工不備による断熱欠損

・2 F の乗っていない1 F 天井裏の断熱材の未施工

≪設備≫

①  施工不備による破損や漏水

≪その他≫

①  地盤沈下による給水管や排水管の破損、漏水

②  防火構造上の不備や防火性能の欠如

③  基礎や躯体の違法なハツリ行為

④  防蟻未処理

⑤  漏水による構造材の腐朽や白蟻の被害等

⑥  不具合が専門家(プロ)以外の作業員により施工されたことが客観的に判断される場合等。また、そのことを知っていて黙認していたこと等。

上記の不具合や瑕疵に関することは詳細且つ多岐に渡る為、その不具合等を抑止するには施工者としても総体的な建築知識と経験を要し、かつ、瑕疵などに対する認識も必要であることは確かですが、ここでのポイントは建築基準法などのようにこれまでも「法体系」として認識されてきたものであればともかく、瑕疵担保責任(民法 634 条)には社会通念上必要とされる建物の性能や技術的水準というものがあり、そのなかで瑕疵に該当する事柄や範囲はどこまでなのか、一般社会にも少しずつ浸透しつつあるものの、まだ業界関係者のなかでもその内容と結果の重大性について認識が低いのが現実のようです。よって、現在までに示されているこのような判例が実際の指標や目安になると思われますが、今後の判例の蓄積やその公表によっても広く認識されていくものと考えます。

ちなみに、建築士の工事監理者としての責任についても最近の判例の傾向では前向きにその責任が明確化されてきつつあり、設計事務所の開設者や建築士に対しても不法行為による 賠償責任 を認める判決が出ていることも注目すべき点です。(平成 14 年松山地裁判決)

コメント

先に記述した事例は何れも適切な工事監理や注意義務等が果たされていたならば、あり得るはずのない施工不備ばかりです。そして、何れも原告である消費者が勝訴している判例の施工不備について、建築主はその建築会社をプロとして信頼して発注や購入をしている一般消費者(一般的には建築に対して素人の方)なのですから、業者側は住宅生産者(プロ)として「社会通念上、最低限必要とされる品質と性能(安全性)が保証された建物を建築し引き渡す」その責任を果たすべきことは売買であれ請負であれ当然のことです。まま双方共に大きなリスクを背負っていることは確かですが、やはり、建築問題の発生の多さや、消費者保護の観点に立てば弱い立場のものを擁護及び救済していくべきであると考えます。

■今回のレポートで皆さんにお伝えしたいことは・・・

建築会社並びに建築設計事務所と建築士の方へ

欠陥住宅問題(建築の品質・施工不備)に関する訴訟事は年々増加の傾向にあります。その傾向と上記の結果や判例を見ると、消費者側の知識不足や理想による要望の結果などとしての抗弁は殆んど認められません。

適切かつ適法な施工や工事監理がなされていなかったことにより、欠陥住宅として訴訟になるなど、その事実が立証されれば風評被害的なことも含めて、当然に高額賠償等の不利益な判決を呑まざるを得なくなるのです。また、同類の瑕疵や訴訟に至っては一度でもその判例があれば、その判例自体が一つの法律になってしまうと言っても過言ではないくらいです。従って、住宅生産者として、建築会社や建築士の責任の重さは重大です。

是非、瑕疵の内容や瑕疵担保責任に対する認識を深めて戴き、契約時の受注・発注体制、設計や施工体制、工事の監理体制、施工マニュアルの見直しなど再チェックをしてみる必要があるのではないでしょうか。

一般消費者(建築主)の方へ

新築の場合、本来は建築段階で『真の第三者機関や専門家』による工事監理や建築検査を依頼し、事前に建築トラブルを抑止することが大変有意義なことであることは言うまでもありません。

既存建物である場合、先に記述している判例が一概に貴方の抱えている問題と必ずしも符合するとは限りませんし、また、その不具合や欠陥を立証すること及び、その相手方との交渉等は容易ではない為、建築検査等の専門家や専門の団体等に依頼されることをお薦めします。

今回、同じような類例の不具合や不安があれば、その判断のお役に立てばとの趣旨で、既に示されている欠陥住宅に対する判例の一部を概略で掲載しました。


KJS は消費者の方の立場で建築検査を行い、建築の時点において欠陥住宅にならない為の検査監理を行っています。また、既存建物の欠陥住宅問題についても原因調査とその救済に向けてのサポートを行なっています。

 
■“ 『転ばぬ先の杖』と、建築検査に対する認識 No.38 - 2006/5/11

1年位前に建築契約をされた方より改修工事の立会いの依頼がありました。

新築に際し、当時第三者検査を依頼するかしないか迷っていらしたのですが、その後「設計事務所による設計と工事監理」を依頼することになり、“その設計事務所の薦めの建築会社で建築することになったので第三者検査は必要ないだろう”ということになっていた経緯がありました。

しかし、その方からのお電話では、現在の住まいに関するさまざまな不具合をお聞きすることになり、なかでも決定的と思える施行ミスが発覚し、その改修立会いを私共 KJS にしてほしいとの依頼でした。
ちなみに、その不具合の内容は当KJSの建築検査項目の一つとしている事柄でもありましたので多少残念な気がしましたが・・・。

施工ミスの内容についてはその業者も非を認めていた為、改修の交渉自体はスムーズにいったのですが、事前に施工(仕様)の不備になることが分かっていたにも係わらず、そのような工事をした業者に再度(改修)工事をしてもらうのは不安があるとのことで、第三者の工事立会いを依頼したいとのことでした。

元請け業者は下請け業者の安易な施行によって、これまで築いてきた施主との信頼関係は崩れてしまい、尚且つ、 1 万円も掛からない材料費や手間を削ったばかりに、百数十万円の改修費用等を出費しなければならなくなるなど、建築会社にとっても何一つ良いことはありません。

施主は設計事務所に対しての追求はしなかったようですが、今回の件は設計事務所や元請け者側の工事監理が適切に行われていたならば有り得ないはずの施行ミスだったかも知れません。しかし、私共 KJS との会話のなかで設計者(工事監理者)が“そこまでの監理はできないですョ”と言っていたのも事実です。では建築中の現場に何回足を運んだのでしょうか?施主の方の証言では、4ヶ月余りの間にほんの数回しか来ていなかったとのことでしたが・・・・・。

今回のようなことが現在、問題となっているマンションなどの大規模の建物であった場合、後で改修をしなければならない可能性を建築会社が事前に判っていたとしても、それを後からでは認めようとはしないでしょうし、仮に認めたとしても対処できない可能性も出てくるのです。

今回の例では、 建築契約時の消費者の安易な契約とは言えませんが、第三者の建築検査監理の必要性に対する消費者側の認識不足も否めないのではないでしょうか。確かに“設計事務所に設計や監理を依頼すれば安心だろう”との判断は一般的には間違いではなかったのでしょうが、しかし、意匠設計のみを行っている設計事務所に殆んど適切(適法)な工事監理をする意思と時間がなければ意味がありません。従って、設計の委託をする時に工事監理の委託契約も交わすなどして、その監理内容を明確にしていなかったことにも問題があったと思われます。ちなみにその場合、設計事務所は士法 24 条 -5 の規定に基づく書面の交付も義務付けられています。

不動産取得や建築契約は貴方自身の責任で行うものです。新築をしようとする時など、トラブルを回避できる方法があるのですから、何かがあってからではなく消費者自らが事前に対策を講じるべきではないでしょうか。今までがあまりにも無防備すぎたように思えます。
“自分達だけはそんなことにはならない”と思っていても現実はそうは行かないこともあるのです。

現在では第三者検査や第三者工事監理は欠かせない重要なことです。
それに掛かる費用は設計や建築費の一部と同じであり、後々まで不安やストレスを抱えたままで生活していくよりは遥かに効率の良いことなのです。

実際に第三者検査やサポートの依頼をしようかと迷っていらした方が、予算の都合や、営業マンの人柄・会社の看板・知り合いや身内の紹介等で契約をして、第三者検査を入れるどころか、気がついたら何も言えないような状態で全てが進んでしまい、入居後の今では妥協又は悪戦苦闘の毎日を過ごしている方もいらっしゃるようです。


≪業界の、ある言葉≫

『素人に見抜ける手抜き工事は素人がした仕事であり、プロにしか見抜けない手抜き工事はプロがした仕事である』という言葉があります。

建築主に分りにくい(分らない)手抜き工事による欠陥工事を未然に回避し、安心で納得のできる建物を建築する為には、建築主自らが第三者検査や監理を依頼するしかないとKJSは確信しています。

 



■“ 貴方は本当に任せることができますか? No.37 - 2006/5/11

貴方が信頼して契約をした建築会社が、このような不備工事をしていたとしても、その工務店や建築会社をまだ信じることができますか?





   



[1]
 ①及び②は筋交い端部(上部、下部)の緊結方法の不備:柱のみに釘 2 本で止め付けられており、梁や桁などの横架材への緊結がなされていません。










[2]
 ②と③は土台火打ち材の設置方法の不備:土台木へのかぎ込みがなされておらず、部材を突き付けた上に釘の2本打ちのみとなっています。










[3]
 ①と②は外壁の一部に断熱材の欠損がみられ、③の床下と④の小屋裏については断熱材が敷設されていません。また、各断熱材の敷設不足箇所の内壁側には結露により、カビや染みが多く発生しています。







コメント
 

断熱欠損等の施工不備についても当然瑕疵(欠陥)と言えますが、上に記述している構造に係わる施工不備については、耐力壁としての役割を充分に果たせず耐震上著しく不利な状態です。建築当時、公庫融資付の建物であったにも係わらず、このような構造上の施工不備が見逃されていたことにも問題はありますが、このような施工を行なうこと自体、建物の安全と信頼ということについての認識の低さに驚かされます。










上の写真の建物は最近建築された建物ではありませんが、建築主がその建築会社を信頼して発注した建物には変わりありません。それなのに何故その建築会社はこのような施工をしたのでしょうか?工事監理者の不在・利益優先主義・施工管理体制の不備・旧式な固定観念・知識不足などによることが考えられますが、それが「知識不足又は故意」の何れであったとしても、 不具合な事象は全く同じ結果として発生するもの であり、すぐに発生するものから数年後に発生するもの、そして、地震等の災害時に本来の計算された耐力が発揮できずに重大な結果をもたらすものまで様々です。

既存建物(戸建て)においては以前にもこのホームページで紹介したように、ひどい場合、劣化している無筋基礎に人通口のハツリ工事を何箇所も行っている等、犯罪的とも言える実例まであるのです。

現在の建築(新築)においても、そして建築会社の大小に係わらず施工不備が多いのは確かです。入居後、建物自体が少しずつ不具合のサインを出している場合もあるのですが、一気に現象がでたりすると重大なことになります。と言えば不安を煽っているようにも聞こえるでしょうが、 KJS はこれまでも実際にあった事や、行なわれていることの事実のみを発信しています。

ちなみに、私共 KJS がこれまで新築の建築検査において1棟あたり 20 回以上現場に足を運んでいますが、何れも施工エラーや基準法違反工事等がなかったことは殆んどありません。勿論不具合があれば改善要請を行う場合も発生しますが、本来は改善要請を行うことが目的ではなく、事前の不具合の抑止や回避が目的なのです。


■今回、皆さんにお伝えしたかったレポートの趣旨とは、
建築会社に対して:
建築に素人の消費者が 信頼して 建築のプロである貴社へ発注するのです。だからこそ、その信頼を裏切らない契約や施工をすることこそが、 本来の信頼関係 ではないでしょうか(当然のことですが・・・)。自社の製品や施工方法が必ずしも正しいとは限りません。瑕疵の定義である「目的物が契約に定められた内容や社会通念上必要とされる性能を欠いていること」について、施工マニュアルをチェックするなど最認識が必要だと思います。

建築主の方へ: この現在、建築に対する適切かつ適法な工事監理や施工がなされていないケースや、建築に関するトラブルの多さ・欠陥住宅等の現出に対する事実、そして“その現実によって苦しい思いをしている方々が沢山いることを、これから建築される方にもっと認識して頂きたい”との思いでレポートしました。



KJSは安心と納得を必要とされる方の為にサポートをします。建築業界との利害関係を持たず、相談される依頼者の為のサポートや建築検査監理を行ないます。


 
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