この度、『土地契約をすることになりましたが、不安なことが多いので契約サポートをして頂けませんか?』といった御依頼がありました。
建築条件付分譲地においての建築契約でしたが、既に建築契約は終わっており、あとは土地の不動産売買契約をするのみといった状況でした!
しかし、土地についての詳細な情報や資料の提供もなく、宅建業法上の説明などもなされておらず、ただ建築契約がアバウトな形で先になされている状態なのです。この状況で土地の取得契約が出来なかったら何処に建築をするというのでしょうか?建築契約自体は法的に有効かもしれませんが、大変非常識なことであり理解できないことです。
建物の契約自体についても多くの不備な点がありました。
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契約時までに必要とされる所要図面が揃っていないこと。
平面図、立面図、パース 3 面、外構工事図面(全てその寸法が記載されていないもの)+仕上げ表のみ
- 建築契約時に添付していると記載されている図面が揃っていないこと
配置図と記載しているものの寸法がはいっていない外構図を代用している等、設計士なら知っているはずです、上記の1.のように寸法が入っていないもの等は設計図とはいえません。設計図とはきちんと寸法が記載されたもののことをいいます。
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見積り書としたものも A3 の用紙 1 枚で、内容が全く不透明なものであること。
(建設業法第二十条に抵触する可能性があります。)また、確定していない工事項目の金額までが概算で算入されていること。・・・・・妥協やトラブルの原因となります。
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土地の契約について何らかの理由で契約ができなかった場合、建物契約自体はどうなるのか特記事項が記載されていないこと。土地取得契約が遅れた場合、工事契約書に記載された工期は守れるはずがないのですがどうするのか。契約書の差し替えや延期とすることも有り得ますが、最初からそんないい加減な請負契約書ならその他の分や条項についても信頼性が疑われます。・・・・・きちんとあるべき条件が整ってから建築契約をすべきでしょう。
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その他、当該宅地建物の売買に関する広告等のチラシには売主・代理・仲介など取引態様の別を記載しておかなければなりませんが記載なし(宅地建物取引業法第 34 条、取引態様の明示義務)。
基本的に明示方法は書面や口頭でも良いのですが、広告等のチラシには記載しなければなりません。今回、この事によるトラブルは無かったのですが業法に抵触することは確かですし、宅建業者としてのずさんな一面も見えます。
型式認定を受けている建物だから図面は出せません・・・!?
ハウスメーカーの営業担当者いわく「型式認定を受けている建物だから要求されるような図面は出せません」などと言っていましたが、そんなことはありません。要求している図面は、寸法の記載された平面図・立面図・配置図・求積図・構造図・矩形図・断面図・伏せ図・各設備図等、契約や建築の際に一般的かつ必要な設計図面ばかりなのですから・・・。
それでも図面が出せないと言うのならば、現場において誰が何を見てどのように建築するのでしょうか?不思議そのものですが、素人の方が普通に考えても単純に分かることです。
決定的なことは、そのメーカーの他の支店の責任者も「お客様が要求される図面は全てお渡ししています、出せない図面はありません。当社の何処の支店がそんなことを言っているのですか?増してや土地の契約もせずに建物の契約を先にしてしまうなど考えられないことです」と言っているのですから・・・。その言葉を鵜呑みにするならば、そのハウスメーカーの各支店毎に著しい温度差があることは明白のようです。これでは信頼の回復や確保は難しく、大切な信頼関係に基づいた『安心と納得』という点からは遠ざかってしまいます。
何の為に土地契約もせず、建物契約を先にしてしまうのでしょうか?
一般的に、「うるさい客」でない場合、注意を建物に対する魅力という部分に引き付けておき、建築契約はアバウトな状態でもなるべく早く『契約』といった形作りを優先してしまうこと。要は精神的な拘束が狙いの一つです。
ハウスメーカー側にもそれなりの言い分はあるでしょうが、消費者にとってしっかりとした意志を固める時間を与えられないのは不利になることであり、昔から買主や建て主に冷静に判断できる時間をなるべく与えないうちに契約といった形を作り上げるのはその会社や営業マンの手法なのです。典型的な例でマンションや建売住宅などの場合、“逸々までに決めて頂かないと2番手3番手の方が待っておられます”“キャンペーン中だからこの価格です”はたまた不動産仲介物件などの中古住宅等の場合では「専門家にきちんと視てもらって購入したい」などと言うと“もう結構です”などと言う業者もいるくらいです。
何れにしても、先に述べているような『手抜き契約』の形態を取っているような建築会社とは契約を控えるべきです。また、消費者側も安易な契約は禁物です。
と言っても、どこからどこまでが安易なのかそうでないのかと言うところも一般的には難しいことから、契約事に少しでも不安があれば専門家に相談されると有益です。
今回の件は、施主の方が現状の進捗状態に疑問を感じてKJSに契約サポートを依頼されたのですが、その後の同行サポートにおいても順序だてた調整を行ったにも関わらず要領を得ないハウスメーカーの対応に不信感がつのってしまったようでした。不動産(宅地)の売主であるメーカー側からきちんとした書類の提出や説明が行われて土地契約が行われているなど、筋道を通した上での建築契約であったならばそのまま普通に進んでいたことかも知れません。しかし、一旦落とした信頼の回復や確保というものは大変難しいものです。
結果
建築契約は依頼者の方の御希望どおり白紙撤回することができ、土地購入の申込金に至っても全額返金されて全てをリセットすることになりました。 |